〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです! 38〉インボイス制度とは?
2023年09月14日 14:20 寄稿消費税インボイス制度が始まる10月まで残り1ヶ月を切りました。テレビをつけると消費者の不安を煽るように、インボイスへの対応に向けて電子帳簿保存法とセットで自社製品を売り込む企業たちのCMが喧しいです。そもそも複雑でよくわからない制度の開始に不安な読者も多いことと思われます。国税庁のインボイス制度特設サイトにQ&Aが掲載されていますが、全127問178ページというあまりのボリュームの多さに、全てを理解している専門家は税理士といえどそう多くはないと思われます。その中でも個人的に多くいただく質問をピックアップしてみました。
Q1 インボイスは私にも関係ありますか?そもそもインボイスって何?
・インボイスで影響を受ける人
消費税インボイス制度は事業者が影響を受けるものです。一般消費者としては特に関係ありませんが、会社の経営者はもちろんのこと、フリーランスや会社勤めのサラリーマンにとっても影響のあるものになります。
・消費税の仕組み
インボイスを理解するためにはまず消費税の仕組みについて理解する必要があります。
消費税は、1年間のうちに事業者が預かった消費税(売上に含まれる消費税)から事業者が支払った消費税(仕入や経費に含まれる消費税)を差し引いたものを支払わなければならないという仕組みになっています。いわゆる儲け(所得)に対して課税される法人税や所得税とは別に計算する必要があり、この点が理解しづらいものとなっています。
消費税は原則としてすべての事業者が支払う必要がありますが、2年前の年間売上が一千万円以下など一定の場合には支払う義務が免除されます。
Q2 インボイスが始まると何が変わるの? 登録番号って何?
・インボイス、適格請求書とは
インボイスという言葉自体は「請求書」のことです。請求書を英語でインボイス(invoice)と言います。しかし消費税インボイス制度におけるインボイスとは、登録番号などが記載された一定の要件を満たした「適格請求書」のことを指します。
消費税インボイス制度のスタートを機にこの登録番号(Tから始まる13桁の番号)というものが新たに登場します。
上記消費税の仕組みにおいて、支払った消費税を差し引くということを「仕入税額控除」と言います。今までは支払った場合の相手先が誰かは問わずに差し引けましたが、これからは登録番号を持っている相手先に対して支払ったものしか差し引けなくなります。つまり、相手が登録番号を持っていない場合、支払った消費税分を差し引けず、結果的に事業者が支払う消費税が増えることになります。
この登録番号を持っている事業者を「適格請求書発行事業者」といい、その事業者が発行する請求書・領収書のことを「適格請求書」といいます。「適格請求書発行事業者」は今後発行するすべての請求書・領収書に登録番号など一定の事項を記載する必要があります。
・「適格請求書発行事業者」になるには
この登録番号は誰でも発行できるものではなく、「適格請求書発行事業者」しか発行できません。「適格請求書発行事業者」になるには、税務署に申請書を提出して登録番号を取得する必要があります。ただし、免税事業者が「適格請求書発行事業者」になるには、課税事業者にならなければなりません。
Q3 売上が1千万円以下の免税事業者だけど、インボイスの登録番号を取得しないといけないの?
業種にもよりますが、取引先から登録番号を求められるかどうかがひとつの判断基準になります。
(小売業)
例えばWebサイト上でアクセサリーの販売をしている場合など、取引先のほとんどが一般消費者などの場合には登録番号を求められることはないので、登録番号を取得しなくてもさほど影響はないものと思われます。
(建設業)
しかし、建設業などの外注として働いている場合などは、取引先である元請けの会社から登録番号の取得を求められるケースが多いでしょう。登録番号を取得しないと取引の継続に支障をきたす場合などは登録を検討せざるを得ないでしょう。登録した場合には確定申告時に消費税の申告と納税が必要になるので、その場合の負担額をあらかじめ想定した資金繰り対策を講じる必要があるでしょう。
(飲食業)
飲食店の場合には会社の接待利用としての割合がどれくらいあるかがポイントになるでしょう。家族連れなどの一般消費者が多い場合は登録しないという選択も考えられますが、登録しないと会社の接待利用需要としてかなりの割合の売上が減少してしまうとなれば、登録を検討せざるを得ないでしょう。
免税事業者がインボイスへの登録を機に課税事業者となる場合には、納税額の負担を軽減するための一定の特例があります。
Q4 インボイスがないと領収書が使えなくなるの?
最も多い誤解のひとつに、インボイスの登録番号がない領収書は経費として使えないの?インボイスに登録しないと領収書を発行できなくなるの?というものがあります。結論としてはNOです。Q1の消費税の仕組みのところで説明しましたが、登録番号がない領収書は、消費税の控除(仕入税額控除)ができなくなるということであり、あくまでも法人税・所得税の計算上の経費になるかどうかとは別で経費性があれば経費になります。手書きの領収書が使えなくなるということでもありません。
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このようにいくつかの質問に絞って説明してみましたが、紙面の都合上内容の多くを割愛しました。センターではインボイス制度について詳しい税理士などの専門家を紹介できます。お気軽にご相談ください。
(厳栄好、税理士)