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〈関東大震災朝鮮人虐殺100年〉運動の現状と課題/東京

2023年09月11日 13:10 歴史

史実に背く後退国

1日、総聯東京都本部と東京朝鮮人強制連行真相調査団が主催し行われた「東京同胞追悼会」。当日、会場となった横網町公園は、同日午前に開催される同種追悼式典と、東京慰霊堂で行われる慰霊祭の参列者でごった返した。

東京では毎年9月1日、同公園内の朝鮮人犠牲者追悼碑前で追悼行事が執り行われてきた。

東京では毎年9月1日、同公園内の朝鮮人犠牲者追悼碑前で追悼行事が執り行われてきた。午前に日朝協会などが主催し、午後には総聯本部と東京調査団が主催し行われる行事たちがそれである。

1973年6月、関東大震災50年に際し日本人有志らが集まり、「関東大震災50周年朝鮮人犠牲者追悼実行委員会」を結成。当時、実行委の代表委員には、都議会全会派の代表たちがその名を連ねた。都の設置許可を経て、同年9月29日に碑の除幕式が行われ、翌年から碑前での追悼行事が行われるようになった。

園内に佇む碑の銘板にはこのようなことばが刻まれた。

「一九二三年九月発生した関東大震災の混乱のなかで、あやまった策動と流言飛語のため六千余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われました。私たちは、震災五十周年をむかえ、朝鮮人犠牲者を心から追悼します。この事件の真実を識ることは不幸な歴史をくりかえさず、民族差別を無くし、人権を尊重し、善隣友好と平和の大道を拓く礎となると信じます。思想、信条の相違を越えて、この碑の建設に寄せられた日本人の誠意と献身が、日本の朝鮮両民族の永遠の親善の力となることを期待します」

以上が全文だが、碑の建立に関わった面々からもわかる通り、今から50年前の日本社会は、少なくとも「あやまった策動と流言飛語のため六千余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われた」という認識が社会一般的なものだった。

10万人以上の犠牲者を出した関東大震災で、東京地域での死者数はその約6割にあたる6万8,660人(都HP参照)。うち朝鮮人犠牲者数について、同年12月5日付の独立新聞は、在日本関東地方罹災朝鮮同胞慰問班の調査をもとに、1,781人と公表している。民族蔑視、植民地支配のもとで敢行された虐殺。その教訓が碑に刻まれたわけだが、大震災から100年を迎え、人々の認識は、社会を取り巻く現状はどうか―。

2016年に都知事に就任し、現在2期目に入った小池百合子知事は、就任翌年の17年から、歴代の都知事らが、(前述午前の)追悼式典に向けて送付してきた追悼文を「東京都慰霊堂で行われる大法要ですべての方々への追悼の辞を述べている」との理由で事実上拒否し続けている。

一方、今年8月には、小池都知事に対し、総聯本部と東京調査団が主催する追悼会への追悼文送付を求めたが、これについても同月14日付で送付拒否を通知。都慰霊協会が主催する大法要で「大震災とその極度の混乱の中で、犠牲となられたすべての方々へ哀悼の意を表している」と弁明した。

関東大震災時の朝鮮人虐殺は、歴史が示す自明の事実である。しかし、こうした要人の態度がまかり通る日本社会の後退具合は、排他主義や団体の主張が「表現の自由」という名目でまかり通る状況からも明らかであろう。

責任を考える市民ら

追悼会で献花する市民ら

1日の追悼会後、会見を開いた高徳羽・総聯東京都本部委員長は、追悼文を拒否した都知事の姿勢について「人権尊重都市をうたう東京都の立場と矛盾することであり、歴史修正主義に基づくものではないかと憂いている。なぜ朝鮮人虐殺犠牲者の前で、過去を改め進んでいこうとの言葉が言えないのか。それによって、在日朝鮮人をはじめ在日外国人への差別や偏見、ヘイトが続いている。政府や都が謝罪し究明する立場を表明するべきだ。政治をつかさどる日本あるいは都のトップが表現することで、社会が変わっていくのではないか」と語った。

また西澤清・東京調査団代表は「朝鮮人虐殺の犯人は国家であることははっきりしている。日本人の責任をはっきりさせて、日本人の問題として考えたい」と語った。

吉沢智子さん(68)は30余年前、当時通っていた大学のシンポジウムで荒川土手に眠る朝鮮人犠牲者の遺骨の存在と虐殺の事実を知り、それ以来関心を持つようになったという。1日、追悼式典で犠牲者に追悼を捧げた吉沢さんは「差別や歴史否定が無くならない原因は、日本の公教育にあると思う。戦争加害の歴史の上に、今の日本が存在するということを国が教える必要がある」と話し、「隠された真実を若者に伝えることが自分の使命。虐殺の事実を広く知らせていきたい」と語った。

2日には、都内で国際シンポジウムが開催された。広島県から足を運んだ文英愛さん(39)は、「100年間、日本が戦争の歴史を省みなかったから、未だに歴史否定の言説が社会にまかり通っている。時間が経つにつれて、問題が深刻化していく」と危機感を吐露。文さんは「この歴史を風化させないためにも常に考え、きっかけがあれば周囲にも広めていきたい」とした。

(文・韓賢珠、朴忠信、写真・盧琴順)

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