朝鮮学校差別是正「受け入れない」/国連人権理事会の各国勧告に日本政府が回答
2023年08月31日 09:00 権利今年1月、スイス・ジュネーブで国連人権理事会で日本の人権状況に関する審査が行われ、日本政府に対し、朝鮮をはじめとする各国から勧告が相次いだことと関連し、先月10日、日本政府が回答した。在日朝鮮人と朝鮮学校への差別政策を問題視し、早急な是正を求めた朝鮮からの勧告については、すべて「受け入れない」と表明した。
国際人権システムの軽視
「普遍的定期的レビュー(UPR)」と呼ばれる同審査は、2006年の国連人権理事会の創設に伴い、新たに設けられた審査制度で、国連の全加盟国(193ヵ国)が対象。審査は4年半に1回のペースで行われ、審査対象となる国を、その他の国が審査する仕組みとなっている。対日審査はこれまで、08年5月、12年10月、17年11月に行われ、今年1月31日に第4回目となる審査が行われていた。
同審査では、日本政府が、各国から度々勧告を受けながらも、実現していない国内人権機関の設置やヘイトスピーチ対策、高校無償化からの朝鮮学校排除、強制労働といった過去の国家的犯罪に対する謝罪および賠償などについて、朝鮮やドイツ、フランス、ベネズエラなどの国々から勧告が集中した。同審査をうけて、国連人権理事会が採択した、各参加国からの対日本政府勧告は、第3回審査の217を大きく上回る300に上った。
これら各国からの勧告に対し、日本政府の立場を示した回答結果文書が7月10日、国連人権理事会で採択された。UPR審査では、各国からの勧告に対し、被審査国が、「支持(support)」または「留意(note)」のいずれかの態度表明をすることが求められている。
今回採択された日本政府の回答文書では、300の勧告のうち、効果や進展状況を確認し、必要な対応をとることなどを意味する「フォローアップすることを受け入れる(Accept to follow up)」とした勧告が180、「部分的にフォローアップすることを受け入れる(Partially accept to follow up)」とした勧告が26、「留意する(Note)」とした勧告が58、「受け入れない(Not accept)」とした勧告が36だった。
これに対し、日本弁護士連合会は、翌11日付で会長声明を発表した。
声明は、第1回目のUPR審査以来、日本政府が、国内人権機関の設立や個人通報制度の導入について多数の勧告を受けている中で、これに対し「支持」ではない「フォローアップすることに同意する」とのあいまいな表現に置き換えて回答している点、さらには、問題の具体的検討状況を明らかにしていない点を指摘。「勧告を出した各国政府からの信頼を損ねるものであるとともに、国連人権システムの軽視と言わざるを得ない」と非難した。
山積する課題、ダブルスタンダードで回避
一方、今回の政府回答において、とりわけ問題なのは、日本政府が「受け入れない」とした勧告のうち、朝鮮学校への差別是正など朝鮮からの勧告については、過去に、その問題性が他国からも度々指摘されているにも関わらず、他の勧告と異なり、政府見解は「なし」とする態度で一貫し、またそれが国連人権理事会でまかり通っている点である。日本政府が高校無償化に関する朝鮮学校差別の是正勧告を「受け入れない」と表明したのは、第3回審査につづき2回目となる。