〈関東大震災朝鮮人虐殺100年〉留学同東京展示会、ゲストトーク
2023年08月03日 11:09 歴史歴史と向き合い、認識正す
7月30日、東京都文京区の文京シビックセンターで、在日本朝鮮留学生同盟東京地方本部(以下、留学同東京)が主催する特別展示会「関東大震災・朝鮮人虐殺から100年~いま、何をするべきか~」が行われた。
同日の午後には、特別企画の第1部、映画『歴史を繰り返してはならない-関東大震災・朝鮮人虐殺80周年を迎えて』(総聯映画製作所2003)上映会に続き、第2部企画として、「朝鮮人虐殺の歴史を記憶し朝鮮人差別に反対する一大行動」実行委員会(以下、一大行動実行委)の実行委員である牛木未来さん(一橋大学大学院修士2年)が「いま、歴史とどう向き合うか~『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』をめぐって~」と題し、ゲストトークを行った。
問題解決の軸は被害者
牛木さんはまず、自身が出版に携わった書籍『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』(加藤圭木監修、一橋大学社会学部加藤圭木ゼミナール編、2021)に寄せられた否定的な意見をいくつか例にあげ、日本社会の歴史認識、特に20代の歴史認識と、その問題点について指摘した。
書籍『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』は、日本人の若者が持ちやすい「日韓」の関係に対する疑問や問題意識をもとに、日本の朝鮮植民地支配の歴史をわかりやすく解説したもの。大学生の著者たちが日本と朝鮮半島をとりまく歴史問題に関心を持つようになったきっかけなどについても語られている。
この本の出版後、例えば「謝罪とはただ言葉だけで終わるものではなく、正確な事実認定、責任者処罰、差別構造の解体が実現された状態であると分かった」といった好意的な感想が寄せられる一方で、「いつも被害者の証言ばかり引き合いに出している」「日本側の主張とも比べなければ意味がない」「朝鮮人を庇った良い日本人もいた」などの否定的な意見も寄せられたという。
牛木さんは「侵略や植民地支配は、被支配者たちから自己決定権を剝奪し、土地、食料、教育など、ありとあらゆる面で搾取を行うことだ」とし、「歴史問題は、政治・外交問題として捉えるのではなく、双方の立場は違っても、被害者の人権回復や、差別や虐殺の再発防止を軸に考えるべきものである」と主張した。
また、学術的成果に基づく史実をなおざりにし、歴史否定論者の主張を鵜吞みにする昨今の社会的風潮が、関東大震災朝鮮人虐殺当時の流言飛語と共通する点があると警鐘を鳴らし、「100年という年月を単に節目と捉えるのではなく、100年経った現在も真相解明が行われておらず、歴史否定によって被害者とその遺族らの人権が踏みにじられている重みを受け止めなければならない」と話した。