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日本の過去清算の現状について/高橋哲哉・東京大学名誉教授

2023年08月26日 08:10 歴史

基調講演をおこなった東京大学の高橋哲哉名誉教授

「2023東アジア共同ワークショップ」(北海道・朱鞠内、18~20日)では、東京大学の高橋哲哉名誉教授がヨーロッパの過去清算の現状を概観し、日本の現状を見つめなおすことでワークショップの歴史的な位置を考えることをテーマに講演を行った。

高橋教授は講演に先立ち、「さまざまなアイデンティティを持つ人々が強制労働の犠牲者を追悼しながら寝食をともにし、学びあい、語り合う素晴らしい場が四半世紀続いてきたことに敬意を表する」と述べた。

高橋教授ははじめに、2022年に出版された書籍『ハト派の嘘』(櫻井よしこ、高市早苗)について言及。同書での「他国は日本のような『謝罪外交』をしていない」という主張を例に日本の政治がガラパゴス化していると指摘。21世紀に入り植民地支配責任をめぐるフランスの動き、オランダ、ベルギー、ドイツが公式に反省や謝罪を表明した事例について解説した。

一方で、日本では90年代後半から社会の右傾化が始まったと指摘し、朝鮮への植民地支配に対する「お詫び」を初めて示した村山談話(95年)には具体性が欠け、菅談話(10年)はそれを踏襲するだけで、安部談話(15年)に至っては「日本」という主語を明記しなかったとその問題点を述べた。

高橋教授は最後に、ヨーロッパの過去清算は近代植民地主義全体が対象になっているとし、それを日本に当てはめてみると「朱鞠内は和人による『北海道開拓』から朝鮮植民地支配までの歴史が折り重なっている場所だ」と、述べた。そして、強制連行の遺骨の発掘、返還を通して植民地主義を克服する努力を市民の力で行っているワークショップは世界に類を見ない運動だと強調した。

講演後、高橋教授は記者たちの取材に応じた。

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