民族性を取り戻す場を再び/「在日コリアン学生キャンプマダン:re」
2023年08月24日 17:27 暮らし・活動12~14日にかけて、「在日コリアン学生キャンプマダン:re」(以下、マダン)が開催された。兵庫県内の宿泊施設で行われたイベントに、東京、西東京、埼玉、神奈川、東海、大阪、京都、兵庫、中四国、九州から、朝鮮半島にルーツを持ち、日本の大学に通う学生ら約200人が参加した。
四つの「re」
今年のマダンのコンセプトとなったのは、「Re:start:在日朝鮮人として生まれ変わる」「Re:gain:民族性を取り戻す」「Re:flect:多様な考えを反射させる」「Re:member:記憶に残り続ける」の四つの「re」(=再びを意味する接頭辞)。コロナ禍を乗り越え、在日同胞学生たちが民族性を取り戻す場となるマダンを、「再び」作り上げようという思いが込められた。約4年ぶりの大々的な開催となった今年のマダンにうってつけの表題だ。参加者らは、学習企画や文化講演会、朝鮮料理作りなどさまざまな企画を通じ、朝鮮の文化に触れ、在日朝鮮人としてのルーツについて考えを共有し、深め合った。
コロナ禍以前の参加者数を回復させ、留学同ネットワークのさらなる強化を一つの目標とした今回のマダン。留学同の学生たちが中心となり、様々なイベントやSNSを通じて宣伝し、参加者を募った結果、コロナ禍以前よりも多くの学生が集まった。参加者らは顔を合わせ、手をつなぎ、パンデミック前の日常を取り戻したかのように心置きなく楽しんだ。
マダンの実行委員長を務めたのは、留学同メンバーである徐郁任さん(東京学芸大学4年)、林真矢さん(名古屋外国語大学4年)、金伶虎さん(滋賀県立大学4年)、黄桂範さん(関西学院大学4年)の4人。企画作りや参加者動員などの準備段階から、当日の行事進行や学生たちのフォローまで全力で取り組んだ。実行委員長らのアイデアが詰まった企画は大好評で、参加者から笑顔と拍手が沸き起こる度、かれらの顔には自然と笑みがこぼれた。
根本を問う
実行委員長を務めた黄桂範さんは、教養部と文化部を兼任し、学習企画や文化体験企画を主に担当した。黄さんは、マダンが留学同活動の入り口になるよう、特に朝鮮学校に通ったことのない学生たちのために、「くだけた雰囲気で、かれらが民族心を取り戻せる企画」になるよう準備を進めたという。
黄さんは「日本学校に通う過程で、在日朝鮮人が自分のルーツについて考える機会はとても限られていると思う。その一方で、留学同での活動では、自分のルーツを根本から問う作業を通じて、朝鮮人としての自分を前向きに受け入れ、朝鮮人としての生きづらさもまた認識できる。」と述べ、「そういった過程を経て、在日朝鮮人運動に自主的に臨めるようになると思う。その意味で、マダンをきっかけに、より多くの学生たちが留学同活動に積極的に参加してくれれば嬉しい」と語った。
徐郁任さん(東京学芸大学4年)は、昨年末から自身が所属する留学同西東京の再建にも力を注いできた。徐さんの積極的な呼びかけが功を奏し、西東京からの参加者数は再建当初の想定を大幅に上回った。徐さんは、約4年ぶりに盛大に行われたマダンが「今後の留学同全体の活動において、再スタートの契機になれば」と話した。
「マダンは、差別や格差が繰り返される日本社会で、守られるべき人が守られ、誰も排除されることのない貴重な場所。朝鮮の文化に触れた同胞学生たちが、ゆくゆくは同胞社会を守る存在になれたら」(徐さん)。
アイデンティティを育む
同じ大学に通う先輩の誘いをきっかけに、今年6月から留学同の行事や活動に参加するようになったという日本学校出身の李巧実さん(東洋大学1年)は、マダンでの学習企画や討論で同じ班の学生と話した際、朝鮮人としてのアイデンティティを育む必要性を知ったという。マダンでの3日間、ただ自分が在日朝鮮人であると認識することにとどまらず、在日朝鮮人として生きていくことに向き合った李さんは「新しい発見が多く、マダンに参加して本当に良かった。これからも留学同の活動に積極的に参加して、朝鮮人としてのアイデンティティを前向きに育んでいきたい」と決意を語った。
(朴忠信)