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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 57〉「難死」をのりこえる一世の「勁(つよ)さ」/小田実④

2023年07月23日 08:00 寄稿

小田実(おだまこと)の描いた在日一世の「オモニ」の、生活実感における即物性と現実的態度、そして格言のように真理を突く人生哲学の言葉は、「通念に基づくタテマエをまっこうから粉砕する力」を持つ。

小田(1932―2007)

日本へ仕事を求めて「密航」してきた同胞のおばあさんに関わっては、「旅券や(外国人)登録証やら」の「カミ(紙)」を持たないことによる苦労を被っても、「人間それぞれに役に立つ」「カミのない人も役に立つで」と愛情のこもった哲学的な言葉を放つ。「カミ」を入手しては「世の中には、人間やってできんことはない」と笑う「オモニ」を前に、「不法就労」というあさはかな言葉を飲み込む「わたし」であった。

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