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川崎のハルモニ追った映画、京都で上映会

2023年06月30日 13:50 社会

出演者らチョゴリで参加

川崎の在日朝鮮人1世、2世のハルモニたちを追ったドキュメンタリー映画「アリラン ラプソディ~海を越えたハルモニたち~」の上映会が6月25日、京都市の龍谷大学響都ホール校友会館で開かれた。映画に出演した川崎のハルモニたちをはじめとする同胞、日本市民ら約270人が参加。在日朝鮮人集住地区であるウトロの住民らも駆け付け、会場は賑わいを見せた。

映画は、在日朝鮮人2世の金聖雄監督が、20年以上撮りだめてきたハルモニたちの姿を収めたもの。金監督は1999年ごろから川崎市桜本のふれあい館に足を運び、ハルモニたちと交流を深めた。植民地期に日本へ渡り、仕事を探して川崎に移り住んだかのじょらのたくましい生きざま、あらゆる権利から排除され、つまはじきにされる中、差別に反対し声を上げる姿が観客の心を揺さぶる。映画は04年公開の「花はんめ」に続く2作目となるが、今作ではハルモニはじめ在日朝鮮人が植民地期から現在まで「たくましく生きざるを得なかった」日本社会の構造的差別にも焦点があてられた。

上映後、主人公のハルモニたち6人が舞台にあがり、色とりどりのチマ・チョゴリをまとって思いの丈を語った。植民地期に日本へ渡り、解放後は分断された朝鮮半島の南に帰り、朝鮮戦争を経験した徐類順さん(97)は「こんなにたくさんの人に来てもらって胸がいっぱい」と声を詰まらせた。

金聖雄監督は「一人ひとりのハルモニの生きた証を残したかった」と映画制作のきっかけについて話した。映画のタイトルも、それぞれのハルモニたちが奏でる物語をひとつの作品にしたいという思いから「ラプソディ」としたという。「かのじょたちが喜んでくれたことが一番うれしい。歴史的背景とハルモニたちの生の声をともに見てほしい」。

ハルモニたちが朝鮮民謡「故郷の春」を披露すると、会場からは大きな拍手と歓声が沸き起こった。

26日には川崎のハルモニたちがウトロを訪ね、平和祈念館や21年8月に起きた放火事件の現場などを見て周った。ハルモニたちはウトロ住民たちと交流を深め、「ウトロ農楽隊」のチャンゴに合わせてともに笑い、踊った。

映画に触れ

長年ウトロで暮らしてきた金眞木子さん(83)は、映画上映後「場所は違えど、私たちのトンネと似通った部分があった。肩を寄せ合って日本社会を生き抜いてきたかのじょらの姿に力づけられた」と感想を述べた。結婚を機にウトロへ移り住み、差別と貧困、劣悪な環境の中でも共に支え合い生きてきたと自身の半生を振り返る金さん。「在日朝鮮人にとって、日本社会は未だ生きやすい場ではない。これからを生きる若い人が、この映画にたくさん触れてくれれば」と願った。

川崎のハルモニたちが識字学級で創作した作文などを収めた書籍「わたしもじだいのいちぶです―川崎桜本・ハルモニたちがつづった生活史―」を読み、上映会に参加したという末原真紀さん(47)は「本を通じて知った人たちに直接会えて嬉しい」と話した。末原さんは、在日外国人の人権問題などに取り組む公益財団法人箕面市国際交流協会のメンバーで、朝鮮の視点から現代史を学びなおす勉強会などを行っているという。「映画を見るだけで終わってはいけないと思う。日本政府は戦争責任や差別の現状を否定し続けているが、そのことについてしっかり向き合える地域社会を作っていきたい」と涙ながらに語った。

(金紗栄)

映画は今冬から劇場公開される。それに先駆け、川崎市内4カ所での上映会が行われる。詳細はこちらから。

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