短編小説「友人」 1/コ・ドンオン
2023年06月21日 09:00 短編小説(本作品は、戦後の社会主義建設時代、元来小さな農機具工場に過ぎなかった工場でトラクターを自力で作った「二人組の発明家」の物語である。「無二の親友」だが、性格は正反対の作業班班長と優秀な技能工が我を張り衝突しながらも、それが相乗効果となって技術革新を起こしていく姿を描いている-編集部)
ヨンナムが見習工として働いている実践作業班には二人の発明家がいた。数千人の従業員を擁する工場であるだけに、発明家たちの数も一人や二人ではなかったが、この二人がとくに人びとの耳目を引くのは、「二人組の発明家」というそのためであった。つまり、この工場でトラクターの製作がおこなわれるようになったとき、数多くの工具や新しい工作機械を短時日内につくり出さねばならない課題が提起されたのだが、そのうちのもっとも困難な問題は、ほとんどこの二人の合作によって解決されたのだった。
ヨンナムがこの作業班にきた当初、二人から受けた印象は「無二の親友」だというものだった。それは、二人が額をよせて一枚の図面をにらんだり、なにかの問題で熱心に議論する姿をよく見かけたからであった。
しかし、日がたつにつれて、かれのこうした考えはしだいにぐらつきはじめた。ヨンナムの考えでは、親友というものはおたがいの人格を尊重しあい、まちがいがあれば人目につかないところでそっと忠告してやるという、そんな関係であるべきだった。しかし、かれらはそうではなかった。
二人とも、自分の意見が受け入れられないようなときには、自制することも忘れて激昂し、声を荒だてて自説に固執し、決して譲歩しようとしないのだった。ときには、人前をはばからず、怒気さえふくんでののしりあわんばかりに激論することさえあった。
しかし、よく観察してみると、それは避けられないことであった。ヨンナムは、二人の間になにか「つつましさ」をさがそうとしていた自分の考えが幼稚だったと思うようになった。とういうのは、かれらが同年輩でどちらもエネルギッシュであったが、性格は正反対で、それはプラスとマイナスの両極だといっていいほどに対照的であったからである。
一人はこの作業班の班長で、「虎班長」として工場内ではだれ一人知らないものはいなかった。姓が虎であることは事実であったが、かれを知る人はその「虎」という姓に「猛虎」を連想するのだった。
どちらかといえば背の低い、がっしりしたからだつきで、ぶあつな胸を張って濶歩するかれの前では、だれであれ道をゆずらなければならないという気になるから不思議である。
(つづく)
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