〈本の紹介〉ルポ　大学崩壊／田中圭太郎　著

驚愕の事態、なぜ認知されない？

筑摩書房。定価＝990円（税込）。03-5687-2601。

京都大学、北海道大学、筑波大学、東京大学、日本大学、早稲田大学、一橋大学、慶応義塾大学、大阪大学…。

ここに挙げた大学の共通点は、いわゆる日本国内の「有名大学」であるとか、偏差値が高いとか、そんなことではない。著者の言葉を借りれば、いずれも教職員や学生から、耳を疑うような告発をされた「崩壊」した大学である。その「崩壊」は多岐にわたり、教育や研究のあり方を変容させるといった、大学そのものを根本から揺るがす、信じがたい事態が起きている。

本書は、国の政策がもとになり破壊が進む国立大、私物化が進む私立大、後を絶たないハラスメント、労働法制を無視した雇用破壊、大学に巣食う文科省の天下りをテーマに、近10年のあいだに各地の大学で起きた、象徴的な事案を扱ったルポルタージュ。大学執行部や文科省からの理不尽な扱いに苦しむ人々の訴えを、「現場から伝える」ことを目的に取材し、まとめた渾身の書だ。著者は紹介されている大学を「氷山の一角」と説明するが、本書では冒頭で紹介した大学を含む26もの大学の名が挙がっているから驚愕だ。