〈今月の映画紹介〉ぼくたちの哲学教室／ナーサ・ニ・キアナン、デクラン・マッグラ監督

分断の街で学ぶ「解決法」

© Soilsiú Films, Aisling Productions, Clin dʼoeil films, Zadig Productions,MMXXI

平和の壁（Peace walls）。人口の4分の1が集中する北アイルランドの首都、ベルファストには、カトリックとプロテスタント間の衝突を避ける目的で1969年に造られた分離壁がある。両地区を隔てる壁の長さは長いもので約5㌔に至り、国内に60近くあるという。

本作は宗教的、政治的対立が繰り返され、近年も衝突が続くこの地の男子小学校が舞台。同校で実施される哲学の授業に迫ったドキュメンタリーである。

闘いの傷跡が残るベルファスト市北部、アードイン地区の中心に位置するホーリークロス男子小学校は、4歳から11歳までの男子が通うカトリック系の小学校。学校を囲む高い壁には鉄条網が張られ、長く紛争状態が続いた影響から、犯罪や薬物乱用、若者たちの自殺が絶えない「絶望を抱えた街」にその学校はあった。