朝鮮初の展示会などをテーマに/『季刊 朝鮮経済資料』2023年第1号
2023年04月10日 10:36 経済『季刊 朝鮮経済資料』(発行=KAN経済研究所)2023年第1号が発行された。今号には、イノベーション型企業の創設をテーマとした資料の翻訳、2022年の朝鮮経済の動向や、昨年に朝鮮で初めて開催された2つの展示会に関する論考など、4つのコンテンツが掲載されている。
「総合資料 各国で推進されているイノベーション型企業の創設について」(解説・訳:張景瑞)は、『コンピューターとプログラム技術』(中央科学技術通報社)2022年5号に掲載された資料の翻訳。本稿は、イノベーション型企業の定義、特徴、評価、創設に向けた施策などで構成されている。解説者は、厳しい経済制裁のもとで自力更生を目指す朝鮮では、「企業所の研究能力開発を不断に向上させることが切実に求められている」としながら、イノベーション型企業への転換は「極めて重要な意義を有する」と述べている。
「2022年の経済動向と評価」(朴在勲)は、現地報道と関連資料にもとづき、昨年の朝鮮経済の動向を8つの分野に分けて整理したうえで、昨年の朝鮮経済に関する評価を行っている。筆者は、各分野の評価を総合しながら、朝鮮指導部が昨年、多くの困難を乗り越える過程で、国家経済発展5ヵ年計画の達成に向けて「自信感」を得たのではないかと指摘している。朝鮮経済の諸般の分野を国家の中長期的なビジョンの中で捉え、展望している筆者の視点にも注目したい。
「経済トピックス 展示会の新潮流」は、「婦人服展示会−2022」(22年10月27日〜11月9日)、「小麦粉食品展示会」(同12月)に関連した2つの論考で構成されている。
前者を紹介している「初の婦人服展示会とファッション事情」(金淑美)は、同展示会に関する報道と、本紙の平壌特派員として現地を取材した筆者の経験にもとづき、平壌のファッション事情を探っている。同展示会には540社が参加し、数百点の新作を含む6万点の衣服などが出展された。筆者は、出店された多様な衣服のうち、ワンピースのバリエーションの多さに着目し、商品開発や品質向上に向けた取り組みを紹介。また、ファッション部門において、首都と地域の企業間の技術格差が縮まっている点についても触れている。
後者の展示会を扱った「小麦粉料理と穀物生産構造転換の意義」(金貞淑)は、小麦が持つ加工や栽培、栄養面の利点を紹介したうえで、朝鮮の穀物生産構造が稲と小麦、大麦生産中心に転換されていることを料理の視点から分析している。本稿では、小麦粉食品展示会、小麦粉料理を扱った品評会や料理技術競演などに関する言及から、小麦粉料理の開発や普及が着実に進んでいることがわかる。筆者は、「食」の創造と研究によって、より高い水準の食生活の文明化が実現すれば、穀物生産構造の転換がいっそう意義のあるものになると述べている。
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(徳)