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〈ものがたりの中の女性たち66〉「正しくないことは死んでもできない」―ある夫人

2023年03月27日 09:00 寄稿

あらすじ

豪胆で有名なある娘が婿を探していた。彼女は「情けない男は願い下げだ」と公言し、自分の前でもじもじするような男は相手にしない。噂が立ち、彼女と結婚しようとする者はなかなか現れない。ところがある日、そんな彼女を気に入ったと言う青年が現れる。「お前、俺の嫁になるか?」と、大声を出す彼を気に入った娘は、快諾する。ふたりで結婚の約束をし、威勢よく馬を走らせ家に向かう途中、いたずら心を起こした彼女は、彼の乗る馬の後ろ脚を思いきり蹴るが、彼は軽々と馬から飛び降り娘の尻を叩く。「これくらい骨がなくちゃね」と娘は笑い、ふたり仲良く並んで馬を走らせる。

主人公イメージ

婚礼の日、輿に乗り新郎の家に向かう途中、晋州の矗石(チョクソク)樓の前にさしかかると彼女は景勝地を見物すると言い出し、輿から降りて廣大まで呼んで思いきり楽しむ。ようやく到着した新婦を婚家の人々は非難したが、日が傾く前に到着したのだからと彼女は意に介さない。式が終わると彼女はお堂に連れていかれる。この家では代々、鬼神が憑いた仮面を祭っているという。祈ることを強制されるが、馬鹿なことをと彼女は断固として断る。後日、彼女は義両親が留守にしている間にお堂に火を点け、仮面を斧で真二つに割る。仮面からどす黒い血が流れ、家人たちは大騒ぎ。彼女を実家に帰そうとするが、名分がない。その日から彼女の夢枕に鬼神が現れ、生まれた子を殺すと呪いの言葉を吐く。ふたり子を失っても彼女は怯まない。3人目も取り殺すと鬼神は脅すが…

第六十六話 呪いの仮面

矗石樓

「呪いの仮面」は、民間に伝わる説話である。元来は仮面劇や仮面舞踏が盛んに行われた地方で伝承されたが、旅芸人が全国を回りながら公演を行うにつれ各地に伝播したと思われる。朝鮮王朝時代の両班の娘とはにわかには信じがたいキャラクターの主人公が、破格で面白い。自由な外出と結婚、男性に引けを取らない大胆な言動、主張を曲げない強さなど、当時の女性たちにとっては、信じられない夢のような話である。

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