国際人種差別撤廃デーに際し、院内集会
2023年03月20日 19:21 権利差別の再生産、原因は日本政府に
国際人種差別撤廃デー院内集会「もう、待ったなし―国際社会と日本の人権ギャップ」(主催=人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット))が14日、衆議院第二議員会館で開かれ、国会議員など80余人が参加した。
3月21日の国際人種差別撤廃デーに際して、毎年、日本における人種差別撤廃を求める集会を開催してきたERDネット。同ネットワークには現在、在日本朝鮮人人権協会や反差別国際運動(IMADR)などマイノリティー当事者を中心とする広範な団体や個人が参加している。
国際人種差別撤廃デーとは1960年3月21日、南アフリカで、アパルトヘイトに反対する平和的デモの参加者に対し、警察が発砲し69人が死亡、100人以上が負傷したのをきっかけに、66年の国連総会で制定された記念日のこと。いまから約63年前の出来事にもかかわらず、近年相次ぐ在日朝鮮人へのヘイトクライムなど、今日においても同様に深刻なテーマといえる。
この日の集会は、「待ったなし」の状況にある、日本の人種差別的状況と、それらをとりまく社会的課題を認識し、「すべての人々の平等、公正、尊厳のために、一人ひとりが立ち上がり、一つの大きな声をあげよう」と企画された。
集会ではまず、「私たちの包括的差別禁止法を作ろう」と題し、弁護士で元国連女性差別撤廃委員会委員長の林陽子さんが基調講演を行った。
昨年12月、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)より包括的差別禁止法の実践ガイド(別表)が公表された。林さんは、この実践ガイドが、「数年間にわたり、被差別当事者や専門家、NGOなどとの協議を経て作成された」と説明しながら、これを普及する必要性を説いた。
【包括的差別禁止法実践ガイド】
- あらゆる差別の禁止
- 国際人権法に沿った差別禁止規定をもつ
- 差別・不利益にさらされた個人・集団の平等実現のためポジティブアクションを明文化
- 国の平等取り扱い義務を規定
- 被害の倍粗油、原状回復を含む効果的な救済を規定
- 立証責任の転換
- 2次被害防止を含む被害者の司法アクセス保障
- 構造的差別に取り組む履行措置を採択
また、欧州をはじめとする世界各国で差別禁止法が制定されている事実に触れる一方、「日本では差別を禁じる法律がない」として、次のような課題を提示した。
「国際会議に参加すると他国の学者たちから『どうして日本には国際人権機関がないのか』とよく聞かれる。…何よりも大切なのは、被差別当事者の声を聞くこと。そして不可分のトライアングルである差別禁止法・国内人権機関・個人通報制度の3つをもって、差別を禁じる体制を設けることだ」(林さん)
つづいて行われたリレートークでは、在日本朝鮮人人権協会の宋恵淑さんが、「在日朝鮮人の民族教育と朝鮮学校を巡る課題」をテーマに発言した。宋さんは、集会のタイトルにもなった「国際社会と日本の人権ギャップ」をめぐり、「象徴的な出来事がちょうど10年前にあった」として、2013年4月、第3回社会権規約委員会・対日審査における、日本政府の対応に言及した。