朝鮮サッカー女子代表から国際審判へ/キム・ウンヒャンさん
2023年02月09日 10:00 共和国“世界中の人々の心に”
サッカー朝鮮女子代表として活躍したキム・ウンヒャンさん(功勲体育人)が、セカンドキャリアに選んだ審判の道で注目を集めている。現役引退後、2020年にFIFAが定める合格基準をすべてクリアし、国際審判員の資格を取得。現在は朝鮮国内の男女1部リーグで笛を吹き、正確かつ安定したレフェリングで専門家たちをうならせている。2012年のU-20女子W杯(兵庫)、2016年のリオデジャネイロ五輪のアジア最終予選(大阪)で日本を訪れ、同胞たちの熱狂的な応援に涙を流していたキムさんは、新たなフィールドで自身の可能性に挑戦している。
成功の秘訣はピッチ外に
サッカー全般のレベルを上げるには、選手らとコミュニケーションを取りながら、ゲームを円滑に進められる審判員が必要不可欠だ。そのためサッカー先進国では、審判員の育成や水準向上に力を注ぎ、FIFA公認の国際審判員を輩出することを目指している。
国際審判員は朝鮮にもいる。中でも有名なのが、女性の国際審判員として15年の女子W杯3位決定戦、16年のリオデジャネイロ五輪女子サッカー準決勝で主審を、そして2017年の男子U-17W杯でサポートレフェリーを務めたリ・ヒャンオクさん(元・朝鮮女子代表)だ。そんな先駆者の道を、キム・ウンヒャンさんも歩もうとしている。
キムさんは幼少期からサッカーを始め、早くから選手としての頭角を現した。優れた技術とスピード、正確なキックで攻守ともに存在感を発揮し、ピッチでは常に中心的な役割を果たした。10代の頃から年代別代表に選ばれ、A代表の選手として臨んだ2013年と2015年のEAFF東アジアカップでは朝鮮の優勝に大きく貢献した。
サッカーの専門家や愛好家たちは、キムさんのピッチ上でのパフォーマンスを高く評価する。しかし、ピッチ外の彼女を知る監督は、キムさんのスキルやフィジカル能力だけでなく、「試合に臨む上での準備」こそが、ピッチ上での成功につながっていると話す。
監督いわく、キムさんは誰よりも念入りに相手チームのスカウティングを行うという。キムさんは試合を控え、相手チームの映像を見ることを心がけている。マッチアップする選手の特徴を把握し、状況に応じた適切なポジショニングを頭の中に入れておくためだ。そうすることで、試合中に目まぐるしく変わる戦況に臨機応変に対応できるという。このような能力は、審判としてのキャリアを積んでいく上でも大きな糧になっている。
審判通じてサッカーの魅力を
キム・ウンヒャンさんは長年の選手生活に幕を下ろし、かねてから関心を持っていた国際審判員になることを決意した。勉強とトレーニングを両立する日々は簡単ではなかった。しかし選手時代と同様、人知れず努力を積み重ねた結果、2020年に晴れて国際審判員の資格を手に入れた。
それ以来、試合状況を予測する能力、それに基づいた正確なポジショニング、試合のテンポについていくためのスピードとスタミナをもって、国内で数々の試合を担当してきた。試合後には、競技中に露呈した問題を総括し、今後の成長に繋げられるよう努めている。
現在は機関車体育団に所属しながら審判を務めるキムさん。彼女の真価が試されたのは、主審を務めた昨年12月の女子1部リーグ第1試合だった。
前半終了間際、攻撃側の選手が相手ディフェンダーと接触し、転倒した。攻撃側のチームは相手DFのファールを強く主張したが、キムさんの目には攻撃側のシミュレーション(ファールを装って審判を欺く行為)に映っていた。キムさんはその場で試合を止め、該当したプレーを映像でチェック。攻撃側のシミュレーションを改めて確認した上で、重ねて遅延行為を行った選手に対してレッドカードを突きつけた。断固とした姿勢で冷静なジャッジを下したキムさんに対しては、各方面から賞賛が集まった。
審判を務める上でのキムさんのモットーは、選手や監督が最高のパフォーマンスを発揮し、観客たちがサッカーの魅力を感じ、試合結果に対する些細な疑問やクレームもなく試合を終えることだ。
国内で経験を積み、その実力が認められれば、いずれ世界の舞台で笛を吹く機会が訪れるかもしれない。国際大会に出場した過去の記憶を思い返しながら、「審判の実力や人格が優れていれば、その人の民族や国が世界の人々に記憶されることだろう」と話すキムさん。「祖国の名誉とサッカーの発展のために、これからも思い切り走り続けたい」との思いを胸に秘めている。
(朝鮮新報)