公式アカウント

【寄稿】なぜ朝鮮人虐殺だったのか/中津川事件の真相調査を巡る動きから

2023年01月31日 11:34 寄稿

昨年末、本紙では「中津川朝鮮人虐殺から100年~アイゴ谷と呼ばれた地~」と題する特集(12月28日付)を掲載し、1922年に新潟県津南町で起きた朝鮮人労働者への虐待・虐殺事件について紹介した。今年で100年を迎える関東大震災朝鮮人虐殺の前年に起きたこの事件は、その実態や犠牲者の数など、真相が明らかになっていないばかりか社会的認知も低い。そうした課題に真正面に向き合い、研究を進める李豊海さん(30、朝鮮大学校研究員)の寄稿を紹介する。

1922年7月29日付の『読売新聞』朝刊5面に「信濃川を頻々流れ下る鮮人(ママ)の虐殺死体」という見出しの記事が掲載された。信越電力株式会社が施行する中津川第一発電所工事期間中に朝鮮人労働者の「溺死体」や「残死体」が信濃川下流で発見されたという。ただしそれは「怪聞」「風聞」「目撃した人の話」として報道されたため、朝鮮人に対する虐待・虐殺があるという噂以上の証拠にはなり得なかった。それでもこの記事が及ぼした政治・社会的な影響力はとてつもなく大きく、これを機にさまざまな主体が虐待・虐殺の事実をめぐってせめぎあうことになった。「中津川朝鮮人虐殺事件」はこのようにして社会問題化した。

Facebook にシェア
LINEで送る