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関東大震災朝鮮人虐殺100年、追悼事業実行委員会が発足

2023年01月27日 16:45 文化

解決に向け、展望ある運動を

25日には第1回実行委員会が行われた。

今年9月、関東大震災朝鮮人虐殺から100年を迎えるにあたり、「関東大震災朝鮮人虐殺100年―虐殺犠牲者の追悼と責任追及の行動」実行委員会が発足した。25日には、第1回実行委員会が行われ、朝鮮人強制連行真相調査団、朝鮮大学校朝鮮問題研究センター、フォーラム平和・人権・環境など朝・日の各団体から約40人が参加した。

実行委員会では、はじめに、呼びかけ人の一人である平岡秀夫さん(弁護士、元衆議院議員、第88代法務大臣)が、開会のあいさつを行った。

平岡秀夫さん

平岡さんは、関東大震災朝鮮人虐殺と関連し、2003年に日弁連が出した対日本政府勧告について言及。同勧告は、当時の虐殺目撃者である文戊仙さん(故人)が、日弁連に対し行った人権救済申し立てを受けてのもので、関東大震災朝鮮人虐殺が「虚位事実の伝達など国の行為に誘発された自警団による」ものだと指摘。日本政府に対し、▼責任を認め謝罪すること、▼虐殺の全貌と真相を調査し、原因を明らかにすること―を求めた。

平岡さんは、かつて官僚をつとめ、また現在は日弁連の構成員でもある立場として、このテーマにしっかりと取り組んでいきたいと述べながら、「100周年という大きな節目に、日本、あるいは日本人のこの問題に対する姿勢を、北東アジアそして世界に示していく機会にしよう」と呼びかけた。

3つの活動軸

藤本泰成さん

つづいて、実行委員会事務局長に選任された藤本泰成さん(平和フォーラム共同代表)が、会のあり方や基本認識、今後の取り組みについて説明した。

藤本さんは、実行委員会の基本認識として、①日本社会が植民地主義を乗り越え、そのことが招来する差別の払拭を基本に考える、②虐殺事件の本質を捉え、日本政府が犠牲者への謝罪と事件の全体的な調査に着手することを求める、③「韓国」併合以降、植民地主義に由来するさまざまな差別に晒されてきた朝鮮半島出身者との連帯を、行動の基本に置く―以上の3点を活動の軸に据えるとした。また実行委員会は、代表制をとらず、呼びかけ趣旨への賛同を原則に、だれでも参加可能とすること、実務を担う平和フォーラム内に事務局を置くことなどが共有された。

一方、今後の取り組みには、①今年9月までに3回の学習会開催、②虐殺跡地などへのフィールドワーク実施、③ブックレットおよびのパンフレットの作成、④日本政府に対する謝罪と調査の要請、⑤追悼式典や記念シンポジウムなどの実施が掲げられた。藤本さんは、発言の結びとして、「植民地主義を克服し、大きな運動を展開していこう」と話した。

虐殺の前史に眼を

金哲秀さん

この日の実行委員会では、準備会から携わってきた金哲秀さん(朝鮮大学校朝鮮問題研究センター副センター長)も発言した。

金哲秀さんは、今後予定される学習会と関連し、関東大震災時の朝鮮人虐殺を考えるうえで必ず押さえるべき「虐殺の前史」があると強調。「朝鮮侵略と植民地支配、さらにはその過程で起きた植民地戦争というように、日本が虐殺を繰り返してきた脈略のなかで、関東大震災時の朝鮮人虐殺についても考えなくてはならない」と、日本の植民地支配責任を問う必要性を訴えた。

また同氏は、もう一つ大事なテーマに、生存者の家族や遺族らが現在まで継続して抱える痛みがあると述べ、「関東大震災朝鮮人虐殺は、過去の問題ではなく今も続く問題」だと語った。そして、「2003年の日弁連勧告を引き出してから、約20年にわたり問題提起をしてきたが、解決につながっていない。果たして、私たちは問題解決型の運動をしてきたのか。100年を迎える今年、問題解決に向けた展望のある運動をしていこう」と強く訴えた。

次回、実行委員会は3月初旬に開催される予定。この度、発足された会の呼びかけ人には、金性済さん(日本キリスト教協議会総幹事)、西崎雅夫さん(一般社団法人ほうせんか理事)、河秀光さん(朝鮮人強制連行真相調査団事務局長)、平岡秀夫さん(弁護士、元衆議院議員、第88代法務大臣)、藤野正和さん(日本朝鮮学術教育交流協会会長)、藤本泰成さん(平和フォーラム共同代表)、前田朗さん(東京造形大学名誉教授)が名を連ねた。

一方で、昨年7月には、1923韓日在日市民連帯、6・15共同宣言実践南側委員会など48団体を含む関東大虐殺100周期追悼事業推進委員会が、南朝鮮・ソウルで発足されている。

近年相次いで発生する在日朝鮮人やその拠点を標的としたヘイトクライム。言葉のとおり、差別的動機に基づく犯罪であるこの延長線上に、関東大震災朝鮮人虐殺に象徴されるジェノサイドがある。こうした地続きの問題群を、誰が、いつから否定し野放しにしてきたのか。植民地支配を背景に、日本の国家権力が介入した関東大震災朝鮮人虐殺から100年、問題に対する歴史の当事者としての参与が、広く求められる。

(文・韓賢珠、写真・金紗栄)

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