一人ひとりの思いが勧告に/国連・自由権規約委員会へ、在日本朝鮮人人権協会が地道な働きかけ


今月3日に採択された国連・自由権規約委員会の総括所見では、日本の人権問題に関する数々の勧告が出された。朝鮮学校差別に関しては、国連の各人権条約委員会から日本政府に対して繰り返し勧告が出てきたが、今回の総括所見にも、朝鮮学校が日本の公的支援制度から排除されていることに対して是正を求める勧告が含まれた。この背景には、差別に抗いながら民族教育擁護運動に取り組んできた朝鮮学校関係者たちの思いを国際社会に届けるための、在日本朝鮮人人権協会の地道な働きかけがある。

人権協会では朝鮮学校が置かれた差別的状況について繰り返し訴えてきた。(写真は11月7日のERD ネット主催の集会)

不合理性を再三訴え

人権協会は自由権規約委の対日審査を迎えるにあたり、朝鮮学校が置かれている差別的状況を自由権規約委側に繰り返し訴えてきた。

2017年7月、朝鮮学校が受けてきた差別的取扱い(①朝鮮学校の不認定、②税制上の差別的取扱い、③卒業証書が直接の大学入学資格として認められないこと、④高校無償化制度からの排除)に関する情報を自由権規約委側に提供。2020年10月には、朝鮮学校が①高校無償化、②幼保無償化、③コロナ禍における学生支援緊急給付金などの各種公的支援制度から除外されていることをそれぞれレポートにまとめ、日本の人権団体で構成される「人種差別撤廃NGOネットワーク」(ERDネット)のNGO共同レポートとして委員会側に提出した。

人権協会はレポートを通じて、3つの朝鮮学校排除問題の背景や不当性を説明し、それぞれに求められている措置について言及した。

高校無償化に関しては、朝鮮学校生徒が同制度から除外されている原因は、「政治・外交的理由に基づいた日本政府による審査基準の削除」にあるとし、日本政府の政策により、「朝鮮学校生徒たちが平等に教育の機会を持つ権利は 10 年以上にわたって阻害されている」と強調。幼保無償化をめぐっては、各種学校であることを理由に外国人学校幼児保育・教育施設に通う子どもたちを制度対象から除外することは、憲法や国際法に反する差別にあたるものであり、「すべての子どもが健やかに成長するように支援する」という幼保無償化制度の基本理念に反すると指摘した。

また、コロナ禍における学生支援緊急給付金に関するレポートでは、「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」で朝鮮大学校が除外されたことが「人種、民族、国民的出身に基づく差別」にあたるとし、外国人留学生に対してのみ設けられた成績上位の要件についても、「国籍差別」だと指摘。公私立のすべての小中高校と特別支援学級を経済的に支援する「学校の段階的再開に伴う児童生徒等の学びの保障」から各種学校を除外することも「不合理」であると、委員会側に訴えかけた。

新型コロナウィルスの世界的な感染拡大により国連人権条約機関による国別審査が延期になる中、人権協会は今年9月、「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」における差別につき、国連の特別報告者4名(人種差別、教育、移住者、マイノリティの分野)から問題是正を求める書簡が日本政府に対し出されたという情報を、前述のNGO共同レポートに追加した。また、自由権規約委員会の委員たちが出席するNGOフォーマルブリーフィング(10月10日)にもオンラインで参加し、ERDネットとして高校無償化、幼保無償化問題などに関して情報提供を行った。

10月13、14日にかけてスイス・ジュネーブで行われた対日審査

10月13、14日にかけてスイス・ジュネーブで行われた対日審査では、サンチン委員から「朝鮮学校が就学支援金制度から除外されているのは具体的にどのような項目によって判断されていることなのか?」 と質問がなされた。

審査終了後48時間以内に書面回答を提出した日本政府は、高校無償化制度が適用される基準について述べた上で、朝鮮学校の無償化制度からの排除は「生徒の国籍や政治・外交上の理由によるものではない」と改めて主張した。一方、ERDネット側は、総括所見が出される前に、委員たちへの追加情報を提供することに決定。サンチン委員の高校無償化問題に関する質問に対しては、在日本朝鮮人人権協会が情報提供を行い、勧告を引き出すために最後まで手を尽くした。

最終的に総括所見では、「植民地時代から日本に居住する在日コリアンとその子孫を、利用できるはずの複数の支援プログラムや年金制度の利用から妨げている障壁を取り除」くべきだとする勧告がなされた。「複数の支援プログラム」の利用妨げは、「高校無償化制度からの朝鮮高校除外など、朝鮮学校排除の問題を意味すると考えられる」(人権協会の宋恵淑部長)。勧告の内容からは、自由権規約委が朝鮮学校を取り巻く現状を深刻な問題として受け止めていることが窺える。人権協会による再三の働きかけの結果、朝鮮学校関係者たちの思いは国連勧告という形になり、日本の人権問題に国際社会の厳しい視線を向けさせている。

(李永徳)