〈今月の映画紹介〉オレの記念日/金聖雄監督
2022年09月28日 09:00 文化冤罪被害「喜びに変えられる」
「今月の映画紹介」では、上映中または近日公開予定の注目映画を、月に1度、紹介します。
1967年、茨城県で起きた強盗殺人事件(※1)の犯人という汚名を着せられ、29年間を獄中で過ごした桜井昌司さん(75)。2009年に再審が認められ、3年後に無罪判決を得た冤罪被害者だ。
本作は、そんな桜井さんの生活を追ったドキュメンタリー。
桜井さんは自身が逮捕された日を「記念日」と呼ぶ。出所後は獄中で書きとめた200編に及ぶ詩を朗読会などで伝えている。刑務所入所当日の思い、家族との別れ、再審が決まった瞬間。人生の節目節目で綴られた作品は、どれも桜井さんの性格を物語るように温かい。
1967年10月10日
夜風に金木犀は香って
初めての手錠は冷たかった
虚偽の自白を強要され、青春時代を刑務所で過ごしたにもかかわらず、桜井さんは「冤罪で捕まってよかった!」と笑いとばす。19年にはガンが見つかり余命1年を宣告されたが、それでも「治ったら面白いよね。ワクワクする」と笑顔。