公式アカウント

強制徴用被害者が南外交部長官へ書簡

2022年09月07日 20:30 社会を知る~今週のnewsトピック~

日本社会や在日同胞を取り巻くニューストピックを週に一度、紹介する。

強制徴用被害者が南外交部長官へ書簡

南朝鮮の大法院(最高裁)は、8月以降、強制徴用被害者に対する賠償としての日本企業の南朝鮮内資産売却(現金化)に関する最終決定を見送っている。これに伴い、尹錫悦政権は、日・南間の外交的解決について公言しているが、内外からは批判が相次いでいる。

大法院は2018年、三菱重工業に対し、強制徴用被害者である梁錦徳さんと李性珠さんへの損害賠償を命じる判決を確定した。しかし、企業側がそれに応じなかったため、南朝鮮内の資産売却を命令。これに対し三菱側は今年4月に再抗告。先月19日の「審理不続行」決定期限を越したものの、南朝鮮内では、主審の大法官(最高裁判事)の退任前に正式決定が下されるとの見方が優勢だった。しかし、大法官が結論を出さないまま今月2日に退任したため、問題は棚上げ状態にある。司法の腰抜け対応には、7月26日付で、南の外交部が提出した判決留保を求める意見書が影響しているとみられる。この意見書に対し、被害者支援団体からは「加害企業の立場で裁判に介入した」として批判があがり、また9月1日には、強制徴用被害者の梁錦徳さんが外交部長官あての公開書簡を送った。

梁さんは書簡で、「日本に行けば中学校に行かせてくれると言うので、クラス長が先に行けと言われて私が行くことになりました。それがすべて嘘でした」と強制徴用当時の経緯に言及。そのうえで「お金のためならとっくに諦めました。 私は日本から謝罪されるまでは死んでも死にきれません。大法院で勝訴したという話を聞いてとても嬉しかったです。 それなのに何年目ですか? なぜ政府は一言も言えずに黙っているのですか」と、南政府の姿勢を強く非難した。

強制徴用被害者が死去

今月1日、強制徴用被害者のチョン・オクナムさんが死去した。享年92歳。南朝鮮の太平洋戦争被害者補償推進協議会などが明らかにした。

チョンさんは1944年、14歳で日本の軍需企業である不二越の富山工場に強制動員された。2003年、不二越を相手取り富山地裁に損害賠償訴訟を起こしたが、1965年の韓日請求権協定で「個人請求権は消滅した」との理由で敗訴。10年後の2013年、南朝鮮で再び訴訟を起こし、2019年1月、ソウル高等裁判所で勝訴していた。

故人は、ソウル高裁が出した勝訴判決の履行をみることなく、この世を去った。

NHK入管報道を非難、移住連が抗議声明

8月31日にNHKで放映された番組「国際報道2022『強制送還の限界〜入管の苦悩〜』」が、「様々な理由で帰国を拒む」人々の権利や尊厳を蔑ろにし、入館側の主張を一方的かつ無批判に伝えたとして、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)は6日、NHKに対する抗議声明を発表した。

前田晃伸会長を含む3人の役員あてに送付された声明では、番組内容に対し、5つの問題点(非正規滞在者について、医療費の国費負担について、送還について、正規化について、真の共生社会に向けた議論のために)を指摘。医療費の国費負担に関する指摘では、「『不法』滞在の長期化が国の費用負担増という問題をもたらしている」とした番組内容に対し、「国の負担だとされる医療費と帰国費用は、収容の長期化や『送還忌避』とはそもそも何の関係もない」と非難。そのうえで「入管が医療費を負担する事案自体が極めて稀であり、2021年3月に名古屋入管収容施設で死亡したウィシュマさんに限らず、多くの被収容者が、満足な医療をうけることができず、身体的・精神的な疾患を発症・悪化させているのが現実」だとしながら、「番組はこういった現実を何一つ見ようとせず、制度や背景の説明もせず、入管が費用を負担しているごく一部の事案のみを取り上げ、あたかも強制送還対象の外国人すべての医療費を国費で負担しているかのような印象を与えている」と糾弾した。

さらに声明は「あまりにアンフェアな報道姿勢である。また、不運にも病に侵された仮放免者の医療が必要な状況を、コストとして捉え『問題』としてあげつらうところに、番組制作者の人権意識の低さが露呈している」と強く非難した。

入管法改正案、国会再提出は見送りへ

日本政府は、昨年廃案となった出入国管理及び難民認定法の改正案について、秋に臨時国会へ再提出を検討していたが、来年に見送る方針であることが明らかになった。

報道によると、法案の再提出に向けて、出入国在留管理庁を中心に改正案の見直しを進めてきたが、さらなる検討が必要だと判断したという。

日本政府の改正案再提出に向けた動きは、今年2月から続くロシア・ウクライナ紛争によって、日本に渡ってきたウクライナ人を手厚く保護するとの名目で「準難民」の枠組みを新設するためのものだ。改正案では、送還を拒否すれば刑事罰に問われる「送還忌避罪」の適用が検討されており、これに対し、弁護士などからは抜本的な法改善を求める声があがっていた。

これと関連し、改正案の国会再提出に反対する市民団体主催のデモが4日、東京、名古屋、大阪など日本各地10カ所で行われ、主催者発表によると約500人が参加。参加者たちは「入管は民族差別や人権侵害をヤメロ」などのプラカードを手に街中を練り歩き、抗議の声をあげた。

ウィシュマさん死因判明、責任問う理由ある

昨年3月に名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)で死亡したスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の遺族が8月31日、名古屋地検の依頼で作成された鑑定書2通のうち1通に死因が記載されていたことを明らかにした。

遺族は昨年11月に当時の看守責任者らを殺人容疑などで刑事告訴したが、名古屋地検は「不作為による殺人や殺意を認める証拠がなかった」として、当時の局長らを不起訴にした。その際、死因が特定できないことを、刑事責任を問えない理由にあげていたという。

弁護団によると、死亡直後の昨年4月に作成された司法解剖鑑定書には、死因に関する記述はなく、一方、今年2月作成の鑑定書には、「脱水と低栄養」を要因にあげたうえで「複合的な要因による多臓器不全であると結論する」と記載されていた。

これに対し、弁護団では検察側の不起訴処分が不合理であると指摘している。遺族らは現在、国を相手取り損害賠償請求訴訟を行っており、9月14日には第3回口頭弁論を控えている。また、名古屋地検の職員らに対する不起訴処分を不服として、検察審査会に審査を申し立てている。

(朝鮮新報)

関連記事

社会を知る~今週のnewsトピック~

Facebook にシェア
LINEで送る