<ワールドオピニオン>血塗られた米国の侵略の結末/ニュー・イースタン・アウトルック
2022年09月06日 06:15 対外・国際ロシア科学アカデミー・東洋学研究所が発行するジャーナル「ニュー・イースタン・アウトルック」は8月25日付で「アフガニスタン:血塗られた米国の侵略の悲しい結末」と題する署名入り記事を掲載した。以下は要旨。
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ドナヒュー少将は、敵地カブールから夜逃げした最後の米兵として、歴史にその名を刻んだ。 それは、ちょうど1年前の8月15日のことである。20年にわたる残忍で血生臭いアフガニスタン占領の末に人々の基本的ニーズを満たすのに必要なインフラも整えず、荒廃させ、略奪し尽くしたまま、「勇敢なヤンキー」たちが脱出した日である。米軍がカブールの空港で大急ぎで荷造りをしている間に、タリバン勢力があっさりと首都を占領し、20年前に時間を戻しただ。これは、軍事予算として8000億ドル以上を注ぎ込む現在のワシントンの政治家たちのいわゆる「民主主義」風の政策の結果である。
国際法を無視した残忍な占領で、米国は何十億ドルも費やしてアフガニスタンに「同盟政権」を樹立した。 しかし、米国が流血と多額の資金投入によって作り上げたその政府はあっという間に崩壊し、「米国の民主主義」がそこで育もうとしたものは何も残らなかった。アフガニスタンのカルザイ前大統領は、「アフガニスタンの人々は、過去20年間、米軍を含む外国軍の駐留に常に悩まさ続けてきた」と指摘した。
米軍の駐留は、この国の人民に何ら利益をもたらさなかったばかりか、国内の産業や農業に甚大な被害を与えてきた。実際、アフガニスタンは長年の占領下で、インフラの未整備だけでなく、米国とNATO軍によるほぼ全面的な破壊によって大きな被害を被った。 イランのアフガニスタン特使は、「今日、アフガニスタンの電力生産量は300メガワットだが、総消費量は700~1000メガワットで、不足分は近隣諸国から供給されている」という。「このような状況では、この国では産業もまともなインフラやサービス網も持てないだろう」と述べ、「米国のせいだ」と同氏は批判している。
一方、米国はアフガニスタンで大きな挫折を味わっただけでなく、世界の覇権も失った。その理由は第一に、ムジャヒディンとタリバンによる侵略者に対する激しい武力抵抗が直ちに行われたことである。第二に、傲慢で鼻持ちならない米国人に対する人々の不信感が広がったことである。 そして第三の問題は、米国人がアフガニスタン社会の文化的側面を含む何世紀も続く規範を著しく軽視し、アフガニスタン人の国益を完全に無視したことである。
撤退から1年、アフガニスタンは20年にわたる残忍な占領の重い遺産がもたらす多くの課題に取り組まなければならない。その一つが、米国が押収したアフガニスタン国民の合法的な資金を取り戻すことだ。タリバンによる統治が始まって1年が過ぎても何百万人もの人々が飢餓に直面しているのだから、資金の返還拒否はアフガニスタンの経済回復の希望を打ち砕くと、米国のメディアさえ言明せざるを得なくなっている。つい先日も、米国とイギリス、その他5カ国の著名な経済学者や研究者70人が、「アフガニスタンで起きている経済的・人道的災害」と「これらの危機を『刺激』した米国の有害な役割」を理由に、ワシントンに対し資産差押えの解除を求める公開書簡を発表したばかりだ。
しかし、国務省のアフガニスタン担当特別代表は「われわれはアフガニスタン中央銀行(DAB)の資本再構成を近い将来の選択肢とは考えていない」とコメントし、「われわれは、その機関に責任を持って資産を管理するための保障、監視機能が整っているという確信は持てない」と開き直っている。つまり、この資金を日々の基本的なニーズを満たすために切実に必要としているアフガニスタンへの返還要請とは関係なく、アフガニスタンの巨額の資産を無制限に管理するのはワシントンであるというわけだ。
DABの約100億ドルの資産のほとんどは、1年前にタリバンが同国を掌握して以来、海外で凍結されている。米国はそのうち約70億ドルを管理しており、アフガニスタンへの人道支援という名目で約35億ドル返還する問題についてタリバンと交渉してきた。しかしその後、タリバンがアルカイダの指導者アイマン・アルザワヒリをかくまっているということを口実にして、米国側はカブールとの連絡を一切絶ってしまった。だが、ワシントンは、このテロリストのリーダーは米国の超精密兵器によって殺害されたと誇らしげに公言している。では今、アフガニスタンの人々にお金を返すのをストップさせているのは何だろうか?
アフガニスタンの人々に、いつ、どれだけの金が引き渡されるのだろうか。ヤンキーは、米国の銀行に預けた外国の金を押収しておきながら、それを返すのを急がないということが慣行となっている。60年前にフィリピンやインドネシアの金が「凍結」されたことを思い出すべきだ。
44年前、イランで革命が起きた後、パーレビ国王の巨額資金が「凍結」された。この金はいまだに返還されておらず、米国は返還に数々の実行不可能な条件をつけている。フセイン、カダフィ、アサドの「凍結」された資金もあり、「凍結」どころかロシアから単に盗んだものも含めるとそうした資金は何千億ドルにも達する。
西側の銀行に預金したり、西側の経済に投資したりせず、ロシアの経済力を発展させなさい」と警告したロシアのプーチン大統領の先見の明を思い起こさないわけにはいかないだろう。わざわざ埃をかぶりながら、お金を取り戻すのに苦労することはないのだ。