米・日・南「三角軍事同盟」と戦争危機
2022年08月23日 06:25 対外・国際朝鮮は要衝に位置する「平和の盾」
衰退する米国が覇権維持のために講じた苦肉の策、朝鮮はそのように見ているはずだ。ウクライナ紛争を誘発した米国は、これを機に戦争同盟であるNATOの結束と拡張、すなわちヨーロッパの「軍事化」とアジア太平洋地域の「NATO化」を推進し、ロシアと中国を同時に圧迫する国際的包囲環を形成しようとしている。米・日・南の三角軍事同盟の実現が、そのための重要手段となっている。
アジア太平洋の「NATO化」
朝鮮は、中国、ロシアと隣接するアジア太平洋地域の要衝に位置する。そして米国と直接対峙している。現在の情勢は朝鮮が「平和と安全を保障するための自らの責任的な使命」(朝鮮外務省スポークスマン談話7月2日)を自覚せざるを得ない展開になっている。
象徴的な出来事があった。NATO首脳会議(6月29,30日)にアジア太平洋地域の首脳が初めて参加した。会議が開催されたスペインで、米・日・南の3者首脳会談が4年9ヶ月ぶりに開かれた。
「私は北朝鮮の弾道ミサイル発射と核実験脅威に対して持続的な懸念を持っている」(バイデン大統領)、「韓米日協力の重要性はさらに高まった」(尹錫悦大統領)、「北朝鮮が核実験を行えば、日米韓の共同訓練を含めて対応する」(岸田首相)…
朝鮮の自衛権行使を問題視し、3者合同軍事演習を含む「対北共助」を確認した会談について、ホワイトハウスは「歴史的な会談」と評価した。 「北朝鮮脅威」を媒介として、アジア太平洋地域の同盟(米日、米南)とNATOをリンクさせる米国の企みが明らかになった。
今回のNATO首脳会議で採択された新たな戦略概念で、ロシアは「欧州-大西洋地域の最も重大で当面の脅威」、中国は「国際秩序を破壊する体制的挑戦」と規定された。反中-反露共同戦線の構築が確認されたわけだ。
また、冷戦終結後に縮小された核兵器の役割が再び強調され、米国の核兵器が「NATO国家の安全保障における最上の担保」と規定された。ヨーロッパから遠く離れた朝鮮の自衛的な国防力強化を非難する敵対的な文言も付け加えられた。
米国は、アジア太平洋の首脳も出席するNATO首脳会議を軍事同盟のグローバル化を実現し、核戦争につながる新冷戦を全地球的範囲に拡大する起点として捉えていたに違いない。
勝算のない軍事的冒険
現在の情勢に対する朝鮮の認識は、「米国と追従勢力の無謀な軍事的策動によって、欧州とアジア太平洋地域で核戦争が同時に勃発する危険な状況がつくられている」(外務省スポークスマン)というものだ。
これまでも朝鮮は常に自国を取りまく安保環境の変化に先駆けて必要な国防強化措置を講じてきた。あらゆる試練と妨害を乗り越えて核武力を完成させたのも、迫りくる核戦争の危機に対応するためだった。
新冷戦が激化することも予見し、対応策を練っていた。 NATOの東方拡大など、ロシアの安全保障を脅かす政策を続けてきた米国が、緩衝地帯における対立と葛藤を助長してウクライナ紛争の導火線に火をつけようとしていた時期に「我々の主敵は戦争そのもの」という立場を表明したのは、動乱と紛争の時代に朝鮮が平和守護の旗印をより鮮明に打ち出すという先見の明があったからだ。
今年1月、米国を強対強の原則で相手にすると決定した後は、米国の敵対行為を制圧するための戦略戦術兵器の強化に拍車をかけ、より高いレベルで人民軍の戦闘態勢を整えている。
冷戦期にも、米・日・南の三角軍事同盟形成の動きはあった。しかし、現在の新冷戦構図の中で、核保有国である朝鮮を相手に脅威と挑発の三角構造を構築することは、核戦争の引き金に指をかけて虚勢を張る愚行であり、勝算のない軍事的冒険だと言わざるをえない。
朝鮮は大国の利害が交差するアジア太平洋の要衝で核戦争を抑止し、地域の安全を保障する「自己の責任的な使命」を果たしていくだろう。相手が戦争の矛を強く振り回すほど、平和の盾がさらに強大になるのはバランス・オブ・パワーの必然である。
(金志永)