〈ものがたりの中の女性たち59〉恋人である前に「知己」でありたいー妓生弄月


あらすじ

靑年悔心曲表紙

朝鮮王朝仁祖の時代、金(キム)眞性(ジンソン)という十八歳の美しい少年士人は、父の名代で松都の商人李(リ)希(フィ)徹(チョル)に貸した十万両を回収に赴く。そこで眞性は、名高い妓生弄(ロン)月(ウォル)(月娘(ウォルラン))と恋に落ちる。月娘は賎民の出身ではなく、家勢が傾いたせいで妓生になったが誇り高く生きている。二人は詩をやり取りし、コムンゴの演奏を通して愛を誓い合う。金が返済されると、眞性はその金を月娘に渡そうとするが、彼女は固辞する。ある日、李希徹が開いた宴席で瓊(キョン)貝(ペ)という平壌妓生が眞性を誘惑、ふたりはあっさり床を共にする。決して身を許そうとしない月娘に不満を抱いていた眞性は、瓊貝との愛欲に溺れ、まんまと騙され数十万両を奪われ夜逃げされる。騙されたことに気が付いた眞性は、床に臥す。ひと月が経っても現れない眞性を心配した月娘は、事と次第を知り彼を自宅に運び看病、快癒の後路銀を与え故郷に送り届ける。その直後、松都に李(リ)春(チュ)華(ナ)という男が留守居として赴任、月娘に迫るが彼女は逃亡、両親亡き後世話になっていた酒幕の女将に高名な僧になっている兄を紹介され、その寺に身を寄せ眞性との再会をひたすら仏に祈る。一方、故郷に帰りついた眞性は、科挙を受け及第、喜んだ両親は騙し取られた数十万両のことを不問に付す。松都に使用人をやり月娘を探すが、行方は分からない。李春華の不当な行いを知った彼は調査し不正を暴露するも、濡れ衣を着せられ島流しに。そこで「靑年悔心曲」を書き、世間知らずな自身の愚かさと、信義を守らず軽佻浮薄だった過去を悔いる。たまたま金自點(キムジャジョム)の謀反が暴かれ、李春華がそれに関与したかどで処刑、眞性の冤罪が晴れる。解放された眞性は寺に隠れている月娘を探し当て、正式に婚姻し幸せに暮らす。

第五十九話 靑年悔心曲

萬言詞

「靑(チョン)年悔(ニョンフェ)心曲(シムゴク)」は作者、創作年不明の短編古典小説。国文活字本が存在する。

作品は、身分を越えて両班の息子と同等な関係を結ぼうとする妓生と、現実の厳しさを何も知らない、誘惑に弱く甘やかされた不実な両班の息子との恋愛を通して、二人の違いを対照的に描いている。「靑年悔心曲」収録の流配歌詞が、朝鮮王朝後期安(アン)肇源(ジョウォン)(または安肇煥(ジョファン))が創作した流配歌詞「萬(マ)言(ノン)詞(サ)」と全く同じものであることから、既存の歌詞の内容を膨らませ小説化した作品であることが分かる。

月娘の作法

月娘(ウォルラン)(弄(ロン)月(ウォル))と眞(チン)性(ソン)の出会いは、一方的な眞性の一目惚れである。

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