〈さくっと解説~知識の源Q&A〉被差別部落問題とは?


多様・複雑化する昨今の日本社会で、相互理解の前提となる知識や認識の積み重ねは、一層その必要性を増している。企画・知識の源Q&Aでは「社会を知る~今週のnewsトピック~」と関連して、今知っておきたい知識をQ&A形式で紹介する。

被差別部落問題とは?

部落差別の解消を目指し、当事者が立ち上がった全国水平社の創立から3月3日で100年を迎えた。長らく差別の対象となり虐げられてきた被差別部落出身者らが一堂に会し、人間としての尊厳を謳った「水平社宣言」は日本初の人権宣言ともいわれる。一方で、現在も差別や偏見に苦しみ、出自を明かせない人もいるのが現状だ。

Q. 被差別部落問題って何?

A. 日本に住む市民の一部が歴史的、地域的に蔑視され、長いあいだ経済・文化・社会的に低い待遇を受けていた問題。身分の貴賤を定めた日本の封建的身分制度に起因する。被差別部落出身者は、出自を理由に就職、結婚、居住の自由や教育の機会均等を奪われるなど、日常生活で不当な人権侵害にさらされ、劣悪な生活を強いられてきた。

近年ではインターネット上で被差別部落出身者の住所が許可なく公開されるなど、新たな人権侵害が生まれている。

Q. 部落差別を規制する法律はあるの?

A.2016年12月に「部落差別の解消の推進に関する法律」が施行された。部落差別のない社会を実現することを基本理念とし実態調査を行うことを定めた。地方自治体に対しては差別被害に対する相談体制の充実と、市民らへの啓発を呼びかけている。ヘイトスピーチ解消法、障害者差別解消法とともに「人権3法」と呼ばれているが、ヘイト解消法同様に差別の禁止規定や差別被害の救済規定、罰則規定はない理念法にとどまっている。

Q. 全国水平社ってどんな組織?

A. 被差別部落の解放を目指して、部落出身者らにより自主的に立ち上げられた組織。「人間は生まれながらにして平等な存在である」という理念から名づけられた。

1871年、日本政府は被差別身分を廃止する「解放令」を公布するが、その後も差別の実態は変わらないままだった。こうしたなか1922年、京都府・岡崎公会堂に各地の被差別部落の当事者ら2千人余りが集い、全国水平社創立大会を開いた。これを機に部落解放運動の火種が付き、各地に広がりを見せた。

水平社は戦時中に自然消滅したが、戦後「部落解放全国委員会」として復活。1955年に「部落解放同盟」に改称した。

Q. 創立大会では何が行われたの?

A. 日本初の人権宣言と言われる水平社宣言が満場一致で採決された。「全国に散在する特殊部落民よ団結せよ」との呼びかけに始まり、当事者の団結と差別の撤廃に向けた決意が記されている。宣言の最後に書かれた「人の世に熱あれ、人間に光あれ」という言葉には、「人間を尊敬し、大切にし合うことで差別はなくしていける」という願いが込められている。

Q. 現在も部落差別は存在するの?

A. 未だ存在する。象徴的な事件として、2016年に川崎市の出版社が被差別部落の地名リストを無断で出版し、ネット上に公開した問題がある。被差別部落出身者らは出版社を提訴し、21年の東京地裁はリストの削除と出版禁止を出版社に命じた。しかし日本国内に差別禁止法がないため、裁判での焦点は「プライバシーの侵害」であった。

2020年に法務省が発表した調査報告書によると、結婚や交際を反対されたり就職の際に不適切な質問を受けるなど、出自を理由とした差別が依然と起きていることが確認されている。