人権意識の改革に一石を/外国人人権基本法制定に向け
2022年07月28日 14:20 権利
「『外国人人権基本法』を作ろう!」連続セミナーの第1回目では、丹羽雅雄弁護士が人権基本法制定の必要性について強調し、法の枠組みについて解説した。
日本には現在、朝鮮半島をはじめとする旧植民地出身者やその子孫などのオールドカマーのほか、出稼ぎで渡ってきた労働者や難民などニューカマーの外国人が多く在住している。一方、これまで日本政府が打ち出してきた対外国人政策は、外国人を管理・監視、規制する目的で制定されており、かねてから是正の必要性があるとの指摘がなされてきた。「出入国管理及び難民認定法」(1951年)や「指紋押捺制度」(55年制定、92年廃止)、「外国人技能実習生制度」(2016年)は、外国人の人権をないがしろにした管理制度の代表的な例としてあげることができる。
丹羽弁護士は「『単一民族社会観』を基礎とした『外国人管理法』しか存在しない日本では、人種差別が拡大する可能性が常に生まれている。外国人の権利が尊重されるためには人権法制度と救済システムが必要だ」と述べ、社会情勢に鑑みた場合、法制定が急務であると指摘した。
現在、日本には、教育基本法や男女共同参画社会基本法など、国の制度や政策に関する基本方針ととなる36つの基本法がある。これらは、国政で重要視する分野において、指導的役割を果たす。同氏はこの基本法について「ある意味、規制というより政策という視点を持っている。基本法は個別法を作るうえでの方針を定めるので、人権の分野でも必要なもの」だと強調した。
日本弁護士連合会では2004年、戦後初となる外国人人権法案を作成したが、いまだ法制定までにはいたっていない。外国人差別の存在を否定し続けている政府と、民族的マイノリティに対する社会の関心の低さが法制定への足かせとなってきた。