ウリマルを考える➀ウリマルと民族問題/朴宰秀


今回から、ウリマルとは何かについて書くことにします。ここで用いるウリマルとは、朝鮮語・言語・言葉などを表します。

民族とは何か

世界には5千近い民族が存在します。

民族とは何か。民族はどのように形成され発展するのか。民族の運命は何によって決まるのか。

紙面の関係上、ここではマルクス主義創始者たちの見解だけを扱います。

彼らによると、民族とは、言語、地域、経済生活の共通性と文化生活の共通性に現れる心理的性格の共通性から発生した歴史的に形成された強固な人々の共同体で、これらの共通性があれば同じ民族だが、この中の一つでも異なれば同じ民族ではないと言います。

しかし、このような見解では、現実問題として複雑に絡まっている民族問題を正しく解決することができません。

例えば、人々が同じ領土内に住まなければ同じ民族でないというのなら、帝国主義者によって北と南に分かれて生活しているわが民族は一つの民族とは言えないし、私たち海外同胞は朝鮮民族ではなくなります。

地域の共通性がなければ同じ民族ではないという見解では、現実的に朝鮮民族の民族問題を解決することができないのです。

1960年10月4日、金日成綜合大学経済学部政治経済学科1年生の教室で、朝鮮歴史の講義がありました。

教員は、朝鮮民族の形成問題について説明しながら、前述したマルクス主義創始者たちの民族に関する命題をそのまま講義しました。

授業が終わろうとした時です。ある学生が教員に質問しました。京都からの帰国者でした。彼は、民族の形成問題を古典通り4つの特徴に照らし合わせて評価すると、在日同胞は朝鮮民族ではないということになるが、この問題をどう見ればいいのかと質問したのです。教室内はざわつきました。在日同胞は朝鮮民族ではないのか、古典の命題では答えが出ませんでした。熱気を帯びた討論は授業後も続きました。

この論争に耳を傾けていた金正日総書記は、古典を教条的に受け入れる傾向を批判しながら、「民族を成す基本表徴は血筋、言語、地域の共通性で、この中でも血筋と言語の共通性は、民族を特徴づける最も重要な表徴になります。民族は、血筋と言語、地域の共通性によって結ばれた人々の強固な集団だと言えます」と諭しました。

総書記は、民族は、何よりも血筋と言語が同じ人たちの強固な集団であるがゆえに、海外で生活している同胞も朝鮮民族である、日本にいる朝鮮同胞は、過去、日帝の植民地統治と地主、資本家の過酷な搾取と圧迫に耐え切れず、生きるために玄界灘を渡った人たちだ、在日同胞は日本で生活しているが、彼らも朝鮮民族であると教えました。

民族の表徴

金正恩総書記は、総聯第25回全体大会参加者たちに送った書簡で、民族を特徴づける表徴は民族の血統と言語であると指摘しています。

血筋の共通性は、人々を一つの強固な集団にまとめあげる基礎であり、言語と文化生活の共通性を保つ根本要因です。

民族を特徴づける血筋の共通性は、氏族や種族のような親族間での血縁関係による共通性とは異なり、一定の地域内で社会歴史的に形成されたものです。

血筋の共通性は民族により様々な形で形成されます。朝鮮民族のように、一つの血筋を継承した単一民族もあれば、血統の異なる人々が同じ地域で、長い間、共同生活を営む過程で血縁的に結ばれ血筋の共通性を持つに至った民族もあります。

血筋の共通性が民族を特徴づける最も重要な表徴の一つであるため、同じ領土内に住んでいても血筋が異なれば同じ民族とは言えないのです。

ゆえに朝鮮民族の血筋を引き継ぐ私たち在日同胞が、国際結婚で朝鮮民族の血筋を継承できなくなれば、やがては他民族に同化してしまいます。

言語の共通性は、民族を特徴づける最も重要な表徴の一つです。

言語は、人々が自主性を獲得するためのたたかいを繰り広げてきた長い歴史の過程で形成され、民族と共に発展してきました。「言葉は民族」と言うように、言語は、民族と共に形成され民族と共に発展し消滅します。民族と言語は運命を共にするのです。

歴史は、言語の消滅が民族の消滅をもたらしたことを証明しています。

例えば、清国をつくり中国を支配した満州族(女真族)は、優れた漢民族の文化を認めて、漢語を積極的に取り入れ血縁的にも漢民族との融合を図りました。これが、満州語の消滅の危機をもたらし、満州族の消滅につながりました。

このことは、血筋と言語の共通性が民族を特徴づける最も重要な表徴であり、民族を守り発展させるうえで血筋と言語を守ることが何よりも重要だということを物語っています。

在日同胞が、朝鮮民族の民族性を守るには、民族の血筋とウリマルを守ることが大切になるゆえんです。

地域と文化生活の共通性も民族を特徴づける重要な表徴です。

地域の共通性とは領土の共通性を意味します。歴史的に見てもほとんどの民族は、同じ領土内で経済生活と文化生活を営んできました。

しかし、帝国主義者による人為的な分断や、その他の要因で同じ民族が違う地域で住むこともあります。

在日同胞も日帝によって日本に住むようになりましたが、血筋とウリマルを守ることで、朝鮮民族として生活しています。

文化生活の共通性は、文学芸術、生活様式、風習などに現れます。

文化生活の共通性には、民族の感情や情緒、心理的特徴が民族性として色濃く反映されるのです。

このように民族は、血筋と言語、地域と文化生活の共通性で特徴づけられる人々の強固な集団です。

この中で、民族を特徴づける最も重要な表徴は、血筋と言語の共通性です。

これらの共通性を、民族の外的要因と呼ぶことにします。しかし、この外的要因だけで、複雑に絡まっている在日朝鮮人の民族問題を解決するには、問題があります。次回は、この問題について書くことにします。

【プロフィール】1970年、朝鮮大学校文学部卒業。同校で48年間勤務。文学部及び文学歴史学部学部長、朝鮮語研究所所長を務める。東京外国語大学、関東学院大学、京都造形芸術大学で非常勤講師を歴任。現ハングル能力検定協会相談役。朝鮮民主主義人民共和国教授、言語学博士。

(朝鮮新報)