バイデン政権を窮地に追い込む朝鮮の行動原則
2022年06月26日 09:27 対外・国際強対強、米国を制圧する力の蓄積
現在、朝鮮は国権を守るために対米関係で強対強の原則を貫徹している。今後、国家の安全保障環境が脅かされ、周辺情勢が激化するほど、自衛のための行動措置はさらに強まることが予想される。
核武力、質量ともに強化
強対強の局面をもたらしたのは米国だ。
朝鮮労働党第8回大会(2021年1月)の報告は、新たな朝米関係樹立の鍵は、米国が朝鮮敵視政策を撤回することだと指摘、今後も強対強・善対善の原則で米国を相手するという労働党の立場を表明した。
その直後に発足した米国のバイデン政権は善対善の道を選ばなかった。国防力強化のための朝鮮の正当な主権行使の非難し、軍事的対決路線を維持した。
党大会開催の1年後、党中央委員会第8期第6回政治局会議(2022年1月19日)を通じて朝鮮の決断が明かされた。米国との長期的な対決をより徹底的に準備するために、国家の尊厳と国権、国益を守護するための物理的な力をより確固たるものにする実際的な行動に移ると表明した。強対強の原則が作動したのだ。
その5ヶ月後に開かれた党中央委員会第8期第5回総会(2021年6月8~10日)では、「国家安全保障に対する担保と信頼の基礎を固める上で歴史的な前進を成し遂げた」という評価が下された。
その間に世界の注目を集める動きがあった。
金正恩総書記の直接的な指導の下に新型大陸間弾道ミサイル「火星砲-17」型の試射が行われた。トランプ政権時代に朝鮮が米国との信頼構築のために暫定停止した活動が再開されたことが確認された。
金正恩総書記が見守る中、新型戦術誘導兵器の試射も行われた。朝鮮はこの兵器システムが「長距離砲兵部隊の打撃力を飛躍的に向上させ、戦術核運用の効果と火力任務多角化を強化する上で大きな意義を持つ」と明らかにした。
強対強原則が作動し、米国は朝鮮の核武力が質量的に強化されている現実を目撃することになった。「任意の戦争状況で、異なった作戦の目的と任務に応じて、異なった手段で核戦闘能力を発揮できるようにしなければならない」という朝鮮の主張が虚言ではないことが証明された。
日米南「共助」と「対応射撃」
一方、米国は日本、南朝鮮との同盟強化を謳い、朝鮮に対する強硬姿勢を誇示し続けている。
5月にソウルと東京で相次いで行われた米南、米日首脳会談では、朝鮮の「脅威」を鼓舞し、米日南が「共助」する必要性を強調した。バイデン・尹錫悦会談の結果として発表された共同声明には、朝鮮の「脅威」に対する対応手段として「核」を名文化した。 「必要な時に米軍の戦略資産を適切に調整された方式で展開」し、「ハイレベルの拡大抑止戦略協議体(EDSCG)を再稼動」し、「合同演習および訓練の範囲と規模を拡大するための協議を開始」するとした。
その後に起きた事態は、交戦状態に置かれた双方が善対善ではなく強対強の道を選ぶと、朝鮮半島の安全環境がどのように変化するかを示した。
5月25日、南朝鮮の合同参謀本部は、朝鮮が大陸間弾道ミサイルを含む3発のミサイルを発射したと発表した。ソウル、東京訪問を終えて帰国の途に就いたバイデン大統領が専用機エアフォースワンに乗って上空にいた時刻であった。その日、南朝鮮軍と米軍は弾道ミサイルをそれぞれ1発ずつ撃った。首脳が約束した米南「共助」をアピールしたわけだ。
南朝鮮の合同参謀本部は、6月5日にも朝鮮が4カ所で各2発ずつ、計8発の弾道ミサイルを同時多発的に発射したと発表した。翌日、同じ8発の「共同対応射撃」が行われた。南朝鮮軍が7発、米軍が1発を撃った。
「強行推進すべき戦闘的課題」
朝鮮は、米国の敵視政策と軍事的威嚇がもはや黙課できないレベルに達したと判断し、強対強原則を作動させた。これに対して米国が旧態依然の強硬策で応じるのは、自滅を招く悪手だといわざるを得ない。「相手が強硬に出てくれば超強硬で対抗する」というのが朝鮮特有の行動パターンだ。過去にも実績がある。
6月に開かれた党中央委員会第8期第5回総会で、金正恩総書記は今日、わが国の安全環境は非常に深刻で周辺情勢はさらに極端に激化する危険性を帯びており、このような情勢は我々に国防力強化のための目標達成をさらに前倒しすることを促しているとし、「労働党の強対強・正面勝負の闘争原則」を再び強調した。そして二つの部門に対して「強行推進すべき戦闘的課題」を示した。「共和国武力」と「国防研究部門」だ。強対強原則の実践が、先端兵器開発や新型ミサイル試射だけではないことが示唆された。
軍事的な強対強が続けば、不側の事態を引き起こしかねない。朝鮮は「正面勝負」の旗印の下、万端の態勢を整えている。一方、米国は進退両難に陥っている。時が経つにつれて朝鮮の核武力が強化され、自らの軍事的虚勢は崩れている。ところが、今さら善対善を期待して対話を訴えても応じてもらえない。朝鮮は米国の敵視政策が撤回されなければ対座しないという立場を明らかにしている。
米国の事情がどうであれ、強対強にもいつかピリオドが打たれる。朝鮮は党第8回大会で、自国の対外政治活動を「最大の主敵である米国を制圧・屈服させることに焦点を合わせる」と表明していた。朝鮮において国権を守るための強対強局面は、最大の主敵を制圧・屈服させる力を蓄え、さらに強くなる期間でもある。
(金志永)