〈総聯第25回全体大会〉キーワードで振り返る24期と今後の抱負
2022年06月07日 09:00 総聯総聯第25回全体大会が、5月28日、29日の両日にかけて行われた。総聯組織が掲げる今後4年の活動方針や主要課題などを決める全体大会に、日本各地から代議員が集うなか、非専従活動家は全体の約半数に及んだ。大会での討論(ビデオ討論含む)は、超高齢化が進む現代において、重要な働き手とされる40代~60代のいわゆるミドルシニア世代が各組織、団体で重要な役割を担うなど「継承」と「革新」の芽吹きを実感させた。参加者たちに24期の活動と今後の抱負について聞いた。(取材班)
【分会】/呉日順さん(女性同盟山口県本部委員長、69)
「日頃活動する姿を同胞たちはちゃんとみている」。大会2日目、和歌山初中校長の討論を感銘深く聞いたと話したのは、女性同盟山口県本部委員長の呉日順さん。学校のために誰よりも汗を流す和歌山校長の言葉が心に響いたのは、「誰よりも行動でみせてきた」(総聯山口県本部国際部長・金静媛さん)呉さんだったからこそ、なのかもしれない。
非専任本部委員長になり14年。「昨日までふつうの主婦だった」呉さんは、病気で療養することになった前本部委員長の空席を埋めるべく、委員長を引き受けたという。それから3年間だけのつもりが現在に至り、いまは「地域の未来のために世代交代に向けた準備に奔走している」。そんな呉さんが24期の活動期間、最も嬉しかったのは、前回大会が終わり、県下の拠点支部である下関支部で大会をしたときのこと。「初めて役員になる若手のメンバーたちが自ら前に出て同胞たちの前であいさつし、今後に向けた目標を話す」姿を目の当たりした。
「だれが言わずとも、前に出て話す役員たちの姿をみて、地に足をつけて支部が自らの力で進みはじめたのだと感じられた。これほどうれしいことはなかった」(呉さん)。
本部や支部、分会の役員たちのほとんどが非専任の女性同盟山口では、「最初は宣伝部長といっても、宣伝部長って何するの?こんな状態だった」という。常任委員会のメンバーは日本学校からの編入生や、朝青活動の経験が少なかったりと、組織活動に長いこと縁がなかったが、呉さんはじめ女性同盟活動に精力的に携わる同胞たちの姿をみて、一人、また一人と組織に集っていった。
「世の主人公は、いまや40代から60代。力を持つ子たち、器のある子たちが宝の持ち腐れにならないように、女性同盟の主役として立てていきたい」(呉さん)
【飛躍】/金正浩さん(宮城県青商会会長、40)
金さんが会長に就任した2020年は、新型コロナ感染症が日本で確認されて間もない頃。宮城同胞社会では、学校行事や地域のイベントなど他地域と同様に何もできない状態が続いたが、そんなときこそ「青商会が同胞たちのなかに入っていかなければならない」と、歴代の先輩たちの活動に学び実践を続けていた。
チラシを作って訪問したり、マスクや支援物資を届けたり。毎年青商会が支援するチャリティーゴルフが延期になるなど、学校支援のイベントが一時中断を余儀なくされたが、「方法を駆使して実践」することで、学校への寄付金が年々増加するなど、学校支援活動にも拍車がかかった。
「会員ファースト」を活動テーマに打ち出し、2年間の青商会活動を進めてきたと胸をはる金さん。そこには「会員第一主義で、会員たちの中に入り、会員たちに依拠しながら、宮城同胞社会を青商会の力で活性化していきたい」という確固たる思いが込められている。
「皆が団結し宮城のために動く方式が宮城県青商会の伝統の基礎をつくっていってる」と話す金さんは、来期に向けて、「今後も成長する青商会、同胞たちと共にする青商会でありたい」と語った。
【死守】/趙昌烈さん(栃木初中校長、57)
「24期は一言で、学校を守れるか守れないかの分水嶺に立たされた時期だった」。栃木初中校長の趙昌烈さんは述懐する。
2010年代に入り、同校は児童、生徒数が減少の一途をたどっていた。学校創立60周年を迎えた2017年は歴代最少の人数で新学期を迎えることになり「このままだと最悪の事態がおとずれてしまう」と危機感を感じざるを得なかったという。
この時を契機に教員や保護者、地域同胞たちはなんとしてでも学校を死守するため、一斉に立ち上がった。特に教員たちは教育のレベルを上げるために一層奮起し、保護者たちが安心して子どもを任せることのできる環境づくりに奔走した。同胞たちも、地域コミュニティーを盛り上げるためのさまざまな取り組みを行い、今年3月には11年ぶりに金剛山歌劇団のチャリティ公演を実現させた。
全体大会を通じて「各階層、団体の成果はその責任者にかかっている」ことを再確認したという趙さん。「今年は学校創立65周年を迎える年。学校のより一層の発展に向けた転機となるよう、教育事業に専念したい」と語った。
【再建】/兪在浩さん(留学同神奈川地方本部副委員長、24)
昨年4月に留学同神奈川地方本部の専従活動家として、社会人生活をスタートした兪さん。
当初、同地方本部傘下の支部には支部委員が一人しかいない状況で、「委員会もままならず、そのうえ、コロナ禍のなか人と会うのも制限される」なかでのスタートだった。
1年間、兪さんが目標に掲げたのは本部と支部の再建。どのように再建するのかとなったとき、まずは人集めからだと、「一緒に運動できる仲間を増やすために、連絡を取り合える同盟員には全員会いに行った」という。その数は年間で50人強。そうして前期に3人が、その後5人が新たに留学同活動に参加するようになり、5月時点で神大支部、東海支部の2つの支部を再建した。
一方、通っていた大学が本名使用の申し出を拒否し、挙句の果てに、その条件として「お詫び」を求めた事件の当事者でもある兪さん。その後大学側は、兪さん本人や留学同を中心とした在日朝鮮人学生団体などからの抗議を受け、HPに「謝罪文」を掲載。該当制度を是正した旨を明らかにしたが、当事者や学生団体が仮に声をあげなかったとしたら、大学側は、同じ対応をとっていただろうか―。
兪さんは、「役員の数、日校生の数、談話の実績など、これまでの活動をはるかにこえていきたい」と、25期の活動に向けたみなぎる決意を語りながら、自身の経験からくる留学同組織の意義についてこう語った。
「例えば、当然のように民族名を名乗り『アンニョンハシムニカ』と話す、このあいさつ一つでさえも、大学まで日本学校出身で民族の風習や文化に日常的に触れる環境になかった自分にとってはすごく大事だった。最初はわからなくても、言葉の意味を知って、人に会ったら『アンニョンハシムニカ』というのだと。大人になりある程度考えが確立されれば、それさえも難しくなる。民族について改めて捉えなおす場、民族性を取り戻せる場はここでしかないのかなと思っている」(兪さん)
【団結】/金成俊さん(総聯福井・中央支部委員長、42)
総聯福井・中央支部は、40代、50代の同胞らが力を合わせ、昨年10月に16年ぶりの再建を果たした。
世代交代や地域の過疎化、緊迫する社会情勢など、同胞社会をとりまく困難は福井県内で最も多くの同胞たちが暮らしていた中央支部も例外ではなく、活動の停滞を免れなかった。そんななか、総聯福井では、「総聯分会を強化する年」であった2021年に地域同胞社会の拠点であり、今後、県の基層組織を強化するうえで鍵となる中央支部を再建することを決定。北陸初中、愛知中高を卒業した同胞たちを中心に常任委員を選出し、支部傘下の同胞宅を集中的に訪問するなど、支部の再スタートに向けて役員一丸となってまい進した。
昨年10月10日、同胞ら20人が参加のもと総聯本部会館で行われた再建総会は、24期を象徴する吉報の一つとなった。
24期の活動期間、十数年ものあいだ有名無実だった支部を再建するうえでの困難は計り知れない。それでも「皆と団結し、乗り越えてきた」(金さん)。
金さんは「今大会を契機に、愛族愛国の伝統をつなぎ、同胞たちに寄り添い、皆が笑顔になる企画など積極的に推し進めていこうと思う。団結すれば必ず成果を上げられるはずだ」と力を込めた。
【未来】/金菊江さん(女性同盟長野・中信支部委員長、64)
長野初中や総聯本部など地域同胞コミュニティーの拠点がある松本市に位置する中信支部。歴史ある支部の女性同盟委員長に任命された当初は、先述の理由から「大きなプレッシャーを感じながら活動を開始した」と話すのは、24回大会以降、委員長を務める金菊江さんだ。
過去に傘下分会の委員を務めたメンバーなど、新たに6人で支部役員体制をつくり、支部の24期事業が始まったものの、コロナの影響から対面での地域行事は中断され、支部の常任委員会さえも回数を制限し実施。「これまでのような活動ができず、歯がゆかった」。
しかし、そんななかでも若手の役員たちが中心となり、リモート形式なども積極的に導入しながら「止まらずに活動してきた」同支部。そこには、金さんはじめ地域の同胞たちを思う支部や分会の役員らの思いが込められている。
「(活動を)止めることはいつでもできる。だけど、いざという時に支部や分会が、同胞たちが集う場所でありたいと思う。些細なことでも何かあれば支部や分会で共有して、少しでも希望がみえたらそれ以上に嬉しいことはない」(金さん)
金さんがそうはっきり言えるのは、歴代の女性同盟支部や分会がそのような役割を果たしてきたことを、身をもって感じてきたからだ。25期の活動は、24期がそうだったように、長野同胞社会の未来を見据えたものにしたいと意気込む金さん。
「コロナ発生後は気分が沈むことも多く、集まる場も限られてきたなかで、それに対応しながら自分たちで出来ることを積極的に見出してやってきた。今後、支部や分会の活動を次世代につなげるために、かれらを全力でサポートする体制を築いていきたい」(金さん)
【拡大】/金成進さん(北海道青商会幹事長、40)
北海道青商会幹事長のの金成進さんは、4年間を通じて「(青商会)活動の質が変わった」と語る。同青商会では、24期の活動期間、とりわけ役員体制の強化と会員数の拡大、民族教育支援活動に注力してきたという。
商工人として地域で活躍する会員を積極的に役員に登用。また、民族教育支援部、経済サポート部、生活サポート部など、すべての部署に役員を網羅し、強固な土台を築きあげた。
毎月行われる幹事会では「すべての事業を数値化、細分化し、改善点を明確にしたうえで、次回の実践につなげるというサイクルが確立された」(金さん)。
他方で、民族教育支援活動では「ハッキョと子どもたちはもちろんのこと、教員たちも青商会がサポートする」という認識のもと、青商会会員と教員らによる「ミレ会議」を開き、民族教育の現状や青商会の活動について互いに共有しているという。北海道初中高の教員を(青商会の)幹事に登用したことも、青商会が学校のニーズに対して円滑に対応するうえでプラスに作用した。さらに、生徒数増加に向けたサポートにも積極的に参与するなど、民族教育支援活動の幅が段々と拡大してきた。
「25期は、民族教育支援活動にすべての力を注ぐ勢いで活動に励みたい。それが青商会の役割だ」(金さん)
【目標】金英俊さん(総聯大阪・西大阪支部 天下茶屋分会 分会長、55)
総聯大阪・西大阪支部の天下茶屋分会は、5月18日に行われた総会を機に再建された。分会長の金英俊さんによると、同分会はここ10年間、活動が停滞し、有名無実化の状態に陥っていたという。「伝統ある分会を再度、活性化させようと支部委員長や分会委員をはじめ、皆がやる気に満ち溢れている」(金さん)。
金さんは、25回大会に参加し、天下茶屋分会を「同胞たちのあたたかい情が通い合うコミュニティーに築いていく」決意をより一層固めたと力を込める。
分会長として担った重責は、もはや自身を突き動かす原動力になっていると金さん。2年後の「分会代表者会議」に向けた目標も明確だ。
「分会が中心となって、民族教育支援活動において一定の成果をあげたい。この地で同胞社会の代をしっかりと継いでいけるよう役割を果たしていきたい」(金さん)
【熱意】/朴春慶さん(総聯福岡・福岡支部名島分会分会長、58)
25回大会では、変わりゆく世界情勢のなかで組織がさらに発展を遂げていくための道標が示された。総聯福岡支部名島分会分会長の朴春慶さんも25期の決意を新たにしていた。
「24期は、分会の再建を契機に地域同胞社会を盛り上げていこうという分会委員らの熱意にあふれた期間だった」。そういいながら朴さんはこう続けた。
「有名無実化していた分会の伝統を繋いでいくため、自分は『分会責任者』として役員を集め、再建までに同胞たちと何度も討論を重ねた」。
2018年に再建された名島分会は、それから現在まで途切れることなく2カ月に1度の分会モイムを続けている。
朴さんは「どこにいっても誇れる分会にしたい。25期は活動にさらに力を入れて、伝統ある分会の魅力を各地に伝えていきたい」と決意した。