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〈ものがたりの中の女性たち 57〉「私のお腹を刃物で引き裂いてみればいいわ!」―金仁香

2022年06月06日 17:35 寄稿

あらすじ

 

継母鄭氏イメージ

平安道に住む安州地方長官金石(キムソク)谷(コク)の妻は、病でこの世を去る。今わの際、残される三人の子どもたちに、継母を尊敬し、言うことをよく聞き、かわいがられるようにと言い残すが、後妻鄭氏は美しい容姿と裏腹に邪悪な人物だった。夫や使用人の前では前妻の息子である仁(イ)亨(ニョン)と娘である仁(イ)香(ニャン)と仁咸(イナム)をかわいがるふりをするが、裏では兄仁亨を引き離し、姉妹を部屋に監禁し食事も衣服もろくに与えず、酷い虐待を加える。自身の子を授かった継母は、仁香の縁談が進むにつれ相手の家門の立派さに財産を奪われるやもしれぬと危惧、仁香を亡き者にしようと画策する。邪悪な老婆を使い、仁香が未婚のまま妊娠したとありもしないことをでっちあげる。これにまんまと騙された父親は、家門の恥だと怒り狂い仁亨に仁香を殺すよう命じる。仁香は池に身を投げ、妹仁咸も首を括り後を追う。ふたりの娘を同時に失った父は病を得てこの世を去り、孤児になった仁亨は亡き母の実家に身を寄せる。一方、安州府使の庁舎に仁香姉妹の幽霊が現れ無実を訴えるが、彼女らを見た府使たちは皆一様に驚いて死んでしまい、村は干ばつにあえぎ、安州は廃邑になる寸前。これに驚いた朝廷は金斗(キムドゥ)龍(リョン)を府使に任命する。

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