〈さくっと解説~知識の源Q&A〉性の多様性
2022年05月04日 08:00 文化多様・複雑化する昨今の日本社会で、相互理解の前提となる知識や認識の積み重ねは、一層その必要性を増している。企画・知識の源Q&Aでは「社会を知る~今週のnewsトピック~」と関連して、今知っておきたい知識をQ&A形式で紹介する。
性の多様性
2010年代以降、メディアを通じてよく耳にするようになったLGBTQという言葉。これが、どのような意味を成すのかを知っている人々はどれほどいるだろうか。性のあり方に関する基礎知識を確認する。(参考・引用=「LGBTQ報道ガイドライン – 多様な性のあり方の視点から」)
Q:LGBTQとは?
A:レズビアン (Lesbian)、ゲイ (Gay)、バイセクシュアル (Bisexual)、トランスジェンダー (Transgender) 、クエスチョニング(Questioning)の頭文字から取った言葉で性的マイノリティの人たちを表す総称として用いられる場合がある。
それぞれに「性自認が女性で、性的指向が同性に向く人。女性同性愛者」、「性自認が男性で、性的指向が同性に向く人。男性同性愛者」、「性的指向が男女どちらにも向く人。両性愛者」、「生まれた時に割り当てられた性別と性自認が異なる人」、「自身の性のあり方について特定の枠に属さない人、分からない人、決めていない人など」を意味する。その他にも、現在では「規範的とされる性のあり方以外を包括的に表す言葉」である「クィア」を含んだうえで、「LGBTQ+」という言葉が使われる場合もある。
Q:性のあり方を考える際に大事な視点は?
A:これまで「男性」と「女性」という2通りで語られてきた性のあり方について、近年に入り、もっと多様であるという考えが広がってきた。大事な視点として、人には①身体の性別、②自認する性別、③好きになる性別、④表現する性別などがあり、それらの組み合わせによって、一人ひとりの性のあり方が異なる。
Q:LGBTQのほかに性の多様性を表す言葉はないの?
A:性の多様性について考える上ではさまざまな用語が使用されるが、基本的な用語としてLGBTQのほかに「SOGIE(ソジー)」という用語がある。これは、セクシュアル・オリエンテーション(SO:性的指向=好きになる性別)、ジェンダー・アイデンティティ(GI:性自認)、ジェンダー・エクスプレッション(GE:性表現)の頭文字から取った言葉で、LGBTQが「どのような人」であるかを表すのに対し、SOGIEは「性の要素」を表すという違いがある。
Q:世界ではこのテーマをどのように扱っているの?
A:1990年にWHO(世界保健機関)が同性愛を精神疾患のリストから削除するなど、かつて「同性愛は病気」だとされてきた頃から比べると性の多様性に関する認識は広がっているものの、国や地域によって状況は異なる。一方、2006 年 7 月 29 日、カナダ・モントリオールで開催された国際会議の場で、 LGBT の人権確保を求める「モントリオール宣言」が議決された際、公的文書に「LGBT」という用語が初めて用いられた。以降、LGBTQやSOGIEに関する権利の重要性が徐々に認識されるようになった。
Q:扱う際に注意が必要な言葉や概念は?
A:例えば「オカマ」や「オナベ」、「おとこおんな」など侮辱的なニュアンスを含むもの、また「レズ」や「ホモ」といった同性愛者を意味する用語の短縮形も、歴史的に侮蔑的な意味合いで使用されてきたため、注意が必要または避けるべき言葉といわれている。
Q:〇〇くん、〇〇ちゃんなどの呼び方って問題じゃない?
A:人の外見などの情報だけに基づき、「〇〇くん」「〇〇ちゃん」などと表現することは、当事者の性自認と異なる場合があるため、ジェンダーを特定しない「〇〇さん」の表現が望ましい。
Q:「カミングアウト」や「アウティング」という言葉を最近よく聞くが、どんな意味?
A:自分の性のあり方を自覚し、誰かに伝えることを「カミングアウト」、また、本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露してしまうことを「アウティング」という。2020 年11 月に東京高裁が「アウティング」について、「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであって、許されない行為」だと示したように、「アウティング」は、プライバシーの侵害につながる。実際に2015年には、一橋大学法科大学院に通っていた男性が、同級生にゲイであることを暴露され自殺する事件が発生するなど、「アウティング」は生命に関わるような深刻な影響をもたらす可能性があるため、話す/聞く際に細心の注意が必要となる。