短編小説「魚のために道をひらこう」13/陳載煥
2022年03月07日 06:23 短編小説3章
テソンがジュンハと初めて会ったのは、解放のあくる年であった。
1944年の秋、22歳になったテソンは日本人経営のある養魚場の建設場に働きに行ったが、次の年の正月からその養魚場の養魚工として雇われた。日本人は、北アメリカから1877年にそこでは珍しいたニジマスを飼育していた。養魚場は、あたかも軍事施設のように極秘裏に作られ、その監視はとても厳しかった。彼らの言うには、ニジマスは普通の魚とは異なり金のかたまりのように貴重な魚だから、一尾でも死なせたり減らしてはならぬとのことだった。幼魚のうちはブタの肝臓を食べさせ、少し成長するとピチピチはねるような魚を食べさせていた。これを見たテソンは、金のかたまりのような魚だというのも無理からぬことだと思っていた。それゆえ、ニジマスという奴は、特別偉い人間が食べる魚だろうと思っていた。