〈明日につなげる―無償化裁判がもたらしたもの―〉広島弁護団(上)
2022年03月09日 08:00 民族教育人権侵害への共通認識
2013年8月1日、愛知と大阪に次いで 3番目となる高校無償化裁判が広島で始まった―。12年末の第2次安倍政権の発足後、文科省は、朝鮮高校への支給根拠となる規定を削除する省令改悪を働く。これは、朝鮮高校を対象から外すために、わざわざ制度の一部を「改正」するというもので、高校無償化の制度理念からはかけ離れる前代未聞の暴挙であった。広島朝鮮学園と広島初中高の卒業生ら110 人が原告となった広島での裁判は、この省令改悪により朝鮮高校の除外が決定的となって以降に起こされた初の裁判となった。
補助金問題の浮上
広島では2010年当時、高校無償化問題と並行して、地元自治体による教育補助金の支給見直し問題が浮上していた。1994年以降、広島県と広島市は、県内にある私立学校を対象に、教育条件の整備・向上と保護者の負担軽減などを目的とする各補助金(①経常費補助金②授業料等軽減補助金)を支給しており、広島朝鮮学園もこの対象であった。
しかし、09年に広島県議会の自民党最大会派らの支援を受けて初当選した湯崎県政(4期目)は、高校無償化からの朝鮮高校除外が取り沙汰されると、学園に対し、突如として同補助金の支給見直しがあり得ることを示唆(10年3月3日)。一時は、支給を「当面継続する」(同3月30日)としたが、国の無償化排除の動きにならう形で13年2月14日、県は学園側へ13年度からの補助金を計上しないことを通告する。広島市もこれにならい、計上を見送った。さらには、先述した省令改悪日の翌日となる同2月21日、県は既に予算計上済みだった12年度分の補助金についても支給停止を決定、市も12年度分の補助金を削減する横暴ぶりをみせた。結果、広島朝鮮学園に対する県と市からの補助金は現在まで凍結状態にある。
こうした地方自治体や国の対応を受け、これまで学校関係者や保護者、広島初中高の在校生らをはじめとする同胞と日本の支援団体を中心に、補助金の早期再開および高校無償化適用を求める抗議活動を重ねていた学園では、省令改悪に伴う無償化除外通告があった13年2月20日を機に、司法闘争を検討するに至った。
「(通告)用紙には『不服の場合、6ヵ月以内に申し立てよ』とあり、これはもう裁判しかないという思いで、同胞団体や日本の支援団体など各方面に投げかけた」(金英雄さん、広島初中高・前校長)
そのようななか、同校の保護者で、当時広島を拠点に司法書士として活動していた呂民愛さん(52)を中心に、弁護団結成に向けた動きが本格化していく。
日頃の親交がきっかけに