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【寄稿】コロナ禍の2年-コロナと外国人差別(中)/安田浩一

2022年02月04日 09:00 権利

2020年初頭以降、新型コロナ感染症拡大の陰で起きた外国人排斥の流れは顕著であった。ジャーナリストの安田浩一氏の寄稿「コロナ禍の2年―コロナと外国人差別」を3回にかけて紹介する。

コロナを利用した脅迫事件

2021年6月、悪意と敵意をたっぷり含んだ怒声が街路の空気を震わせた。

「多くの人を殺したのは他でもない、ここにいる”支那人”なんですよ」

政治団体「日本第一党」党首・桜井誠の”第一声”だった。

都知事選告示日である。同選挙に立候補した桜井が最初の街頭演説先として選んだのは中国大使館前(東京都港区)である。

中国人の蔑称である「支那人」を連呼し、さらには新型コロナ肺炎を「武漢肺炎」と言い換え、聞くに堪えないヘイト街宣は続く。

そもそも──かつては差別者集団「在日特権を許さない市民の会」(在特会)を足場に、ヘイトスピーチを繰り返してきた人物だ。

差別体質は変わっていない。

「”支那人”は10万円を渡したら簡単に人を殺すんです」と根拠不明な持論を叫び、大使館から出てきた公用車に「”支那人”のねえちゃん、答えてみいや」と怒鳴りつける。

日本第一党のメンバーが行った川崎駅前での街宣を取り囲むカウンターの人たち(20年7月12日)

そんな差別主義者の桜井に、東京都の有権者約18万人が票を投じたのである。

桜井は前回16年の都知事選にも立候補し、約11万票を獲得して世間を驚かせた。しかし今回の得票数は前回の1.5倍にも伸びている。

「恐怖でしかない」。私の周囲では、在日コリアンの多くがそう口を揃えた。

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