短編小説「春の農村にやってきた青年」13/千世鳳
2021年11月23日 09:15 短編小説鼻の頭にぷつぷつ汗をかいたヨンエが、キルスの手からホミの柄をひったくった。
「そんな手荒にしたら、腕をくじくじゃないか」
「だって、そんなにぐずぐず削ってないで、もっと手に力を入れて早く削らなきゃ駄目じゃない」
ヨンエはにっこりしながらキルスをやり返した。彼女は上手に鎌を動かして棒の先を削ると、手早くそれをホミにはめ込んで、コンコンたたいた。背は、キルスの肩ぐらいしかないが、賢くすばっしっこそうな彼女に、キルスはすっかり見とれてぼんやり突っ立っていた。