〈九州無償化裁判〉日朝友好千葉県の会・千葉朝鮮学校を支える県民ネットが声明
2021年06月03日 10:27 民族教育朝鮮学校を高校無償化制度の指定対象から外したのは違法だとして、九州中高の卒業生ら68人が国に対し損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は5月27日付の決定として、卒業生らの主張を退けた1審判決(19年3月14日、福岡地裁小倉支部)、2審判決(20年10月30日、福岡高裁)を支持し、上告を棄却した。
これと関連し、「日朝友好千葉県の会」と「千葉朝鮮学校を支える県民ネットワーク」(千葉ハッキョの会)が同日付で抗議声明を発表した。以下、全文。
九州朝鮮学校無償化訴訟の最高裁不当判決に断固抗議する!
2021年5月27日、最高裁判所第一小法廷(深山卓也裁判長)は、高校無償化が適用されないのは違法として、国を相手取り損害賠償を求めて闘い続けている九州朝鮮中高級学校の卒業生68名の上告を棄却した。われわれ両会は、この決定に激しい憤りをもって抗議する。司法は三権分立の精神を完全に無視し、憲法に基づいて「良心に従い独立して職権を行う」ことを放棄したと言わざるを得ない。
原告側が、国が高校無償化から除外したのは「政治・外交的理由に基づいた処分で、在日朝鮮人社会への差別行為」と主張したのに対して、被告である国は政治・外交的な意図はなく「在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と(朝鮮高級学校が)密接に関係しており、支援金が授業料に充てられない懸念がある」として請求棄却を求めていた。2019年3月14日、福岡地裁小倉支部(鈴木博裁判長)は国の主張を鵜呑みにして原告側の請求を棄却した。2020年10月30日、福岡高裁(矢尾渉裁判長)は、「朝鮮高校内の教育内容は朝鮮総連からの『不当な支配』を受けている合理的疑念」があり、九州朝鮮中高級学校を対象外とした国の判断は「不合理とまではいえない」として一審を支持する不当判決を下した。
2010年4月に始まった「高校無償化法」は国際人権規約の規定の実施であり、「全ての意志ある高校生等が、安心して勉学に打ち込める社会をつくる」ことを目的としている。 それ故に政治・外交的理由に左右されることなく、全ての各種学校の在日外国人高校生にも国として学びの機会を経済的に支援することを基本理念としている。しかるに2013年2月20日、第二次安倍政権の下村博文文科相は「国民の理解が得られない」という主観に基づき、朝鮮高級学校のみを無償化適用除外とするため、根拠となる文科省令を改悪した。国連人権各委員会から再三にわたり是正勧告を受けているにもかかわらず、朝鮮総連と朝鮮民主主義人民共和国との関係をことさら強調しながら、政治・ 外交的理由により朝鮮高級学校を無償化から排除した。
教育基本法第10条は「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」と規定している。国はこれを根拠に「朝鮮高校内の教育内容は朝鮮総連からの『不当な支配』を受けている」としているが、この第10条は「(教育が)超国家的な、或いは軍国主義的なものに動かされると云うようなことがあった」(1947年3月19日の貴族院本会議における高橋国務大臣答弁)という戦前の国家権力の教育への介入を反省したことにより規定されたものである。
日本政府は、一度として財政支援を行ったことがないにもかかわらず、「朝鮮人設立学校の取扱について」(1948年)や「朝鮮学校閉鎖令」(1949年)、数年前には「朝鮮学校に係る補助金交付の留意点について」(2016年)等を朝鮮学校が所在する各都道府県知事に発出して朝鮮学校を弾圧してきた。朝鮮学校に対して「不当な支配」をしているのは日本政府の方である。われわれ両会は、朝鮮総連が朝鮮学校を必死に支援している存在であることを、日頃の活動を通して目の当たりにしている。
在日朝鮮人にも納税の義務は等しく負わせておきながら、補助金の凍結・減額を行い、高校無償化から朝鮮高級学校を外し、幼保の無償化から朝鮮幼稚園を外し、さらにはCOVID-19 に係る支援からも朝鮮学校を排除するなど、日本政府は朝鮮学校に対して一貫した差別政策を採り続けている。「多文化共生」を口にしながら、朝鮮に繋がるものは例外とする日本政府の人権感覚は異常であり、何としてでも正さなければならない。本来、それを正すのが司法のはずである。
われわれ両会は今後も引き続き、朝鮮学校への補助金支給・高校及び幼保の無償化適用等を求め、全国の仲間とともに連帯して取り組んでいくことを表明する。
2021年5月27日
日朝友好千葉県の会 共同代表 上野建一・小宮清子
千葉ハッキョの会 代表 廣瀬理夫