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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 24〉「仮面」と、他者と、朝鮮人と/安部公房⑤

2020年07月17日 15:23 寄稿

「他人の顔」(新潮文庫)1964年作

「他人の顔」(1964)の主人公は、事故で顔を失ったことが自己の喪失へとそのまま結びつく苦悩に苛まれる。数回にわたり安部公房の植民地体験をとりあげた本連載の問題意識からすれば、「顔」を失うことは、そのまま日本人としてのアイデンティティーの喪失の喩とも言え、そこには戦後日本社会に受け入れられず自らも十全にアイデンティファイできない故郷喪失者、戦地、植民地からの引揚者としての体験が根底にあると言えるだろう。

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