課題解決し、民族教育の発展を/広がるオンライン授業、学びの確保へ
2020年05月07日 17:08 民族教育新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、休校措置をとる各地の朝鮮学校では、休校中に自宅で過ごす児童・生徒らの学びを保障するため、オンライン授業を導入するなど積極的な対策を講じている。教員たちが日々、試行錯誤を重ねる中、子どもたちは自宅での学習にどのように取り組んでいるのか。4月下旬、オンライン授業を受ける韓允柱さん(初2)と、在宅勤務をしながら子どもたちを見守る保護者の韓昌道さん、康仙華さんに話を聞いた。
家庭で子どもの学習をサポート
「27人が1列で並んでいます。ヨンオギは前から22番目に並んでいます。かれ/かのじょの後ろには何人が並んでいるでしょう?」
教員は問題を読みあげる際「一緒に問題を読んでみましょう」と児童たちに呼びかける。算数の授業を受ける允柱さんは、教員からの問いをモニター越しでキャッチし、答えをノートに記入する。この日は、2桁の数の引き算を筆算で解いてみるといった内容だ。
「いつもは、授業で子どもが分からない箇所や問題についてアドバイスしている」と話す保護者の康さんも、この日は允柱さんが練習問題や応用問題を難なく解いていくのでそばで見守るだけだった。10分ほどの授業終了後も、允柱さんは集中力を切らすことなく、提出された宿題を黙々と解いていた。
3人きょうだいの長男である允柱さんは東京第9初級に通い、弟と妹は都内の保育園に通っている。4月7日、東京、神奈川など7都府県に「緊急事態宣言」が発出されたことで、弟と妹が通う保育園は休園に。保護者の韓、康さんは互いに役割を分担しながら在宅ワークと育児の両立を図ることとなった。
「子どもたちには規則正しい生活を徹底している」と話す韓さん。允柱さんは毎朝6時半に起床し、午前中は康さんが付き添いながら、オンライン授業を受けている。授業の時間割は月曜から金曜日までで、基本的に1日2教科だ。授業のあいだ、韓さんは下の子どもたちの世話を受け持ち、午後は子どもたちを連れてサイクリングや簡単な運動、レゴ遊びなどを行っているという。
「それぞれ仕事をしながら、育児や家事などバッティングしているものは互いに分担し、時間を確保している」(韓さん)。
韓さんは、オンライン授業が導入されたことで子どもに「『やらなければならないことがある』という意識が芽生えた」としながら、「何もなければ、子どもが夏休みのような感覚になってしまうから、『自宅で授業を受ける』という刺激が日課の中で大切だ」と話す。
康さんは「経験豊富な先生が授業をしているので安心感がある。内容も分かりやすい」と感心する一方で「双方向のやりとりがあるわけではなく、子どもたちの理解度に関わらず、一方的に授業が進んでしまい、先生の意図と子どもの不安が互いに伝わっていない。たとえば、国語や日本語など、文章の読解となると、もともと苦手なことに加えて、面識のない先生が授業を進めるから、本人も不安になりイライラして、集中力が落ちてしまう」と、子どもの理解度、教科ごとのモチベーションの差などにより生じるオンライン授業の難点を挙げた。
允柱さんのクラスでは、4月22日から「オンライン・ホームルーム」を開始した。毎朝10時から同級生2人と担任の教員と画面越しで顔を合わせ「何時に起きた?」「朝食は何を食べた?」といったやりとりや授業の補習などを行っている。康さんは「初めてオンラインで同級生や担任の先生とつながったときは嬉しそうだった。毎日顔を合わせることで、本人もモチベーションは上がっているようだ」とオンライン授業スタートの当初といまとの、允柱さんの変化を肌で感じている様子だった。
韓、康さんは「子どもながらにこうした状況が正常ではないと感じている。私たちもこれ以上在宅ワークや休校が長引いたらどうなるのか」「職場のメール確認や電話の対応など、在宅ワークを進めなくてならないので、つきっきりで授業のサポートというのは難しい」と不安を吐露する。允柱さんは、「授業は難しくはないけど、学校に行ってトンム(友達)と会いたい」と学校の再開を待ち望む。
休校措置が長引くなかで、子どもたちの学びの機会を確保することは急務である。しかし、子どもたちにとって自宅はプライベート空間であるため、通常の授業のように長時間、大量の内容を学ぶことは難しく、集中力が持たないことも懸念される。また、一定水準以上のオンライン環境を整えられるかどうかは家庭の事情に左右されるといった面もあり、課題解決が急がれる。
一方で、オンライン授業という試みによって、日本各地の同胞児童・生徒たちが質の高い民族教育を受けることができるという新たな視点を得ることができた。今回の試みが、今後、民族教育をさらに発展させるうえで積極的に活用していくことが重要だ。
(全基一)