“同胞たちを心に描き”/動画通じて力と希望を、各分野の取り組み
2020年04月30日 10:44 スポーツ 文化 民族教育新型コロナウィルスの感染拡大によって同胞社会が困難に直面している中、同胞たちは互いを勇気づけようと様々な活動に乗り出している。代表的な例は、SNSなどを通じた動画の発信だ。各分野の取り組みを紹介する。
「楽しくサッカーできる日を」
サッカー界ではリーグ戦やカップ戦が中断に追い込まれている。再開の時期は不透明。選手たちはチーム全体での練習を行うことができず、個々人でのコンディション維持に取り組む状況が続いている。
そんな中で在日本朝鮮人サッカー協会は、Facebookページで同胞サッカー選手たちの動画を配信することにした。これは各地の朝鮮学校サッカー部に所属する子どもたちのためだ。
協会が選手たちにコンタクトを取ると、誰もが二つ返事で快諾。選手自ら、クラブ側と動画出演の交渉を進めてくれたという。
協会のFacebookにアップされている動画では、元朝鮮代表であるFC町田ゼルビアの李漢宰選手(37)、横浜F・マリノスの朴一圭選手(30)、ブラウブリッツ秋田の韓浩康選手(26)、栃木SCの韓勇太選手(23)らが実践的なトレーニングを、南朝鮮の水原FCに所属する安柄俊選手(29)が華麗なリフティングを披露。朝鮮女子代表の経験を持つ日本体育大学3年の李誠雅選手は、自宅で実践可能なストレッチを撮影している。
FC琉球の李栄直選手(29)は朝鮮学校のサッカー部員たちへメッセージを届けている。
「コロナウィルスの影響でウリハッキョが休校になり、サッカーができない日々が続いていると聞いています。自分自身もサッカーができる状況にはないけど、その中でもできること、コロナウィルスにかからないこと、家でできるトレーニングなどに努めています。困難な状況が続きますが、今はみんなで力を合わせて我慢し、練習再開に向けてそれぞれが良い準備を行いましょう。みんなが楽しくサッカーができる日が来ることを、願っています」
来たる公演に向け
「苦しい時こそ、いつも応援してくれる同胞たちに力と希望を与えたい」。金剛山歌劇団の団員たちは、その思いを動画に込めFacebookページで配信している。
4月初旬から3回に渡り、若手団員たちのメッセージ動画を配信。思わず笑みがこぼれてしまう制作過程のNG動画も。現在は舞踊手たちのメッセージ付プロフィール動画を発信している。
4月19日に公開されたテレワーク演奏の動画は、とりわけ大きな反響を呼んだ。この動画には、ソヘグム奏者である梁聖晞団員、呉香愛団員、金仙芽団員が出演。LINEでのやり取りを通じて、団員たちの「素朴な思い」を描くワンシーンもある。
「私たちが今できることは何だろうか」―3人は「疲れた心を癒したい」との考えから、春の季節にぴったりな朝鮮の名曲「ひばり」を三重奏で披露する。
このような動画を発信する過程で、金剛山歌劇団のもとには温かい励まし、応援メッセージが続々と届いているという。Facebookのコメント欄には「今年の公演も是非観たいです」、「折れそうな心が和みます」、「テレワークでの演奏を待ち望んでいました」などの言葉が寄せられている。
6月に予定されていた本公演は延期になることが決まった。そんな中でも団員たちは、各地の同胞や日本のファンらの姿を心に描きながら、来たる公演に向けて活動に励んでいる。
全身使いストレス発散
外出自粛や在宅勤務の日々が続くと、運動不足や精神的なストレスの増加などが懸念される。そんな不安を解消する動画も続々と発信されている。
在日本朝鮮人芸術体操協会は、YouTube上に健康体操の動画を3本(身体ほぐし➀と②、リズム体操)アップしている。これらは体操の同胞専門家らが創作したもので、BGMもオリジナル。映像には椅子に座ったバージョンが挿入されており、誰もが実践できるように工夫をこらしているのが特徴だ。
ゆったりとしたアリランの音楽に合わせて身体のバランスを整えていく「身体ほぐし」は、リラックス効果が期待できる。一方、「健康体操」は軽快な音楽にのって、腕振りや腰のツイスト、ステップやジャンプを行うなど全身を思い切り動かすので、ストレス発散に持ってこいかもしれない。
何度も協議を重ねた末に創作された「健康的な心と体を維持するため」(韓錦女理事長)の健康体操。一度実践してみてはいかがだろう。
朝大体育学部のFacebookページでは学部生向けに、自宅でできる筋力トレーニングやストレッチの動画が紹介されている。
体育学部の教員が出演しているとあって内容は本格的だ。筋力トレーニングは上半身、下半身、体幹の3本立て。ストレッチも肩甲骨、前腿、股関節など、部位別に分けて動画が撮影されている。
ある教員によると、動画配信が始まると、各地の同胞や朝鮮学校からさらなる要望が舞い込んできたという。これに応えた体育学部は、幼稚班園児や初級部低学年生を対象とした基本運動の動画を配信。歩き、バランス、ギャロップ・スキップ、ジャンプの4つの動作を盛り込んだ動画は、幼い子どもを持つ同胞家庭、学童保育を実施する朝鮮学校で活用されている。
親子でチャレンジ
外出自粛が続く近頃、子どもとの家での過ごし方に悩む家庭も多いのではないだろうか。そんな今だからこそ、子どもたちを「褒めて伸ばす」取り組みを紹介したい。
休校期間中、東京朝高学区の幼稚班では、園児たちが自宅で有意義な時間を過ごせるように各校のオリジナル動画を共有し、保護者たちに配信する活動を続けている。そんな中、埼玉初中は教員らが制作した動画と合わせて、初級部2年生のレゴブロック教室で講師を務める李寿華さん(30)による動画を各家庭に届けている。
「親子であそぼう!おうちでLEGOチャレンジ」と題したこの動画には、同校幼稚班に通う李さんの息子(3)が出演し、いくつかのミッションにチャンレンジしていく。
第一弾の動画で用意されたミッションは3つ。まずは、赤いブロックを3個探してみよう。次に、青いブロック2個に緑のブロック1個。最後は、黄色とオレンジのブロック1個ずつと赤のブロックを2個。
子どもが途中でミッションを忘れても、ある程度は見守ってあげよう。時には「まだ探せていないブロックは何かな?」と質問を投げ、向上心を引き出してみるのもいい。
肝心なのは、子どもをたくさん褒めてあげること。成功体験を得ることで、子どもの自己肯定力が自然とアップするからだ。指先をたくさん動かすと大脳が活性化するため、ブロック遊びは思考力や記憶力向上にもつながるとされている。
(李永徳)
動画はこちらから
●在日本朝鮮人サッカー協会(Facebook)
https://www.facebook.com/ksaj.official/
●金剛山歌劇団(Facebook)
https://www.facebook.com/kongozan/
●在日本朝鮮人芸術体操協会(YouTube)
https://www.youtube.com/channel/UCl1YTdaTANRdRAp_t6DjkTA
●朝大体育学部(Facebook)
https://www.facebook.com/taiikugakubu/