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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 17〉閉塞の時代、「不幸な若者たち」/大江健三郎③

2019年11月09日 10:17 寄稿

「芽むしり仔撃ち」(1958)、「われらの時代」(1959)いずれも新潮文庫

「いいか、お前のような奴は、子供の時分に締めころしたほうがいいんだ。出来ぞこないは小さいときにひねりつぶす。俺たちは百姓だ、悪い芽は始めにむしりとってしまう」―1958年発表の、「芽むしり仔撃ち」の一節。戦争中、外部から遮断された疎開先の山奥の僻村に監禁された、感化院の少年たちのリーダーである主人公に向かって村長が投げつける言葉だ。今日この言葉が、朝鮮学校・幼稚班の生徒園児たちを幼保無償化からも除外する日本政府の所業とだぶって響いてきて仕方がない。異国に育つ朝鮮人の芽を、小さいうちにひねりつぶし、むしりとろうとするかのような冷酷さへの怒りと戦慄とともに。

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