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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 9〉朝鮮戦争と日本文学⑤小林勝/果たされるべき未来への「架橋」

2018年12月26日 09:00 寄稿

「架橋」収録、「チョッパリ 小林勝小説集」(三省堂 1970年)

1971年に45歳の若さで早逝した小林勝は、文字通り生涯をかけ朝鮮と向き合い戦後日本を生きた稀有な日本人文学者であった。

小林の唯一の書下ろし長編「断層地帯」(1958)の冒頭近く、作者の分身たる朝鮮植民者二世であり共産主義者の主人公北原は、朝鮮戦争のニュース映像から、「故郷を眼の前につきつけられるような感動」と「それが無惨に破壊される、体の中をひき裂かれるような苦痛」を同時に感じる。戦火の朝鮮は、「過去」の「故郷」としての朝鮮への郷愁を粉砕する。自らが植民者二世として事実上君臨していた植民地時代は決して終わっていないという認識こそは、小林の文学の原点であった。

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