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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 3〉「時間の芯の腐蝕と天皇家賛美」/石牟礼道子(下)

2018年06月23日 09:00 寄稿

「上野英信集」(戦後文学エッセイ選12 影書房刊)

「独占資本のあくなき搾取のひとつの形態といえば、こと足りてしまうかも知れぬが、故郷にいまだに立ち迷っている死霊や生霊の言葉を階級の原語と心得ているわたくしは、わたくしのアニミズムとプレアニミズムを調合して、近代への呪術師とならねばならぬ」(「苦界浄土」第1部)として、石牟礼道子は、水俣の風土から、いにしえから召喚した豊饒な言葉の海から、近代文明の毒を呪いえたのであった。しかし その石牟礼が、2013年の10月には、皇后へ、水俣病胎児性患者に会ってくれるよう手紙を書き天皇皇后との面会を橋渡しした。

チッソは皇太子妃の出自と関わり第二水俣病の昭和電工も皇后美智子の親族とつながっている。まさしく天皇制のもとでの独占資本による「あくなき搾取」の犯罪性も、またそれらへの呪い、被害者たちの「怨」も、この石牟礼の行為およびこれを称賛する言説らによって、天皇とくに皇后との「水俣の鎮魂」(!)を通した「魂のふれあい」「心の通じあい」などというヒューマニズムや、東洋的(?)静観などという「美談」、あるいは素朴な古代信仰回帰へと希釈されてしまっている。

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