加害の歴史否定する風潮に危機感/「記録する会」伊藤孝司さんに聞く
2017年02月14日 09:00 歴史「植民地支配・侵略の被害者証言を記録する会」(記録する会)は、今春開設予定のウェブサイトで被害者証言映像を順次公開していく。活動の根幹を成すのは、アジア太平洋諸国の被害者の証言だ。30年以上にわたって被害者と向き合い、その貴重な証言をカメラに収めてきたフォトジャーナリストの伊藤孝司さんに、取材当時を振り返り、被害者への思いをあらためて語ってもらった。
未公開映像
1998年5月、平壌。
薄い水色のチマ・チョゴリをまとい、部屋の中央に座るハルモニ。頭に巻いた白い布は、頭痛を紛らわすためのものか。ハンカチを握りしめながら、凄惨な体験を毅然とした口調で訴える。カメラのアングルが変わり、口内、胸、腹、局部など全身に及ぶ拷問の跡が画面いっぱいに映し出される。
「拷問で無理やり口の中にそんなもの(拷問の器具)を入れるし、殴るしで、あまりの痛さに歯が抜けるのもわからない状態でした。…すべて針で刺されましたから。ぜんぶ見てください。この辺りもぜんぶ見てください」――
日本軍性奴隷制被害者の鄭玉順さん(98年12月死去)の、胸をえぐられるような証言だ。伊藤さんが発表してきた被害者証言や写真の数々は書籍や映画などを通じて幾度となく目にしてきたが、被害者が直接体験を語る姿は、その歴史的価値の高さをあらためて感じさせるものだった。