〈本の紹介〉ヘイトデモをとめた街 /神奈川新聞「時代の正体」取材班編
2016年11月07日 10:44 権利差別に打ち勝つ共生の力
ヘイトスピーチ対策法成立直後の6月5日、風景が変わった。日本全国で吹き荒れたヘイトデモが川崎市中原区で、出発直後に「中止」に追い込まれた。
本書のタイトルは「ヘイトデモをとめた街 川崎・桜本の人びと」。ヘイトデモに抗う桜本の人々と、「ヘイトをとめる当事者」としてペンを握った、神奈川新聞「時代の正体」取材班の差別根絶を目指す闘いの記録である。
「あなたがあなたらしく、私が私らしく生きる」。全国有数の在日朝鮮人集住地域である桜本では、長年の営みの中で共生の理念を培っていった。そんな街を襲ったヘイトデモ。それはまさに「多文化共生のまちづくり」に対する挑戦にほかならなかった。
川崎市ふれあい館の職員である崔江以子さんをはじめ、桜本の住民たちは、差別を扇動する醜悪なヘイトデモを行う人々に対し、憎しみではない、「共に生きよう」とラブコールを送る。「多様さを誇り、楽しむ」。そんな桜本の人々の豊かさが伝わる印象的な場面がある。