静岡初中で新校舎竣工式・創立50周年記念行事/未来に向けた新たな一歩
2014年10月14日 16:55 民族教育今も昔もかわらないものを胸に
静岡初中新校舎竣工式及び創立50周年記念行事が5日、同校で開催された。降りしきる雨の中、約350人の同胞、日本市民らが集まり、50周年を迎えた喜びをともに分かち合った。
世代間の繋がり
同校の新たなスタートとなったこの日、県内外から集まった卒業生たちは様変わりした校舎の姿に目を細めながら、昔話に花を咲かせた。
参加者たちが公演を観覧する中、せっせと料理を運び、売店を切り盛りするオモニたちは前日から、チヂミや牛すじ煮込みなど料理の準備に勤しんだ。
「お互いに知らないオモニたちもいるだろうから、自己紹介しましょうか!」学校の炊事場でオモニ会と静岡学校オモニ会OG「サラン会」のオモニたちが和気あいあいとあいさつを交わす。同校にはオモニ会から始まり、サラン会、コスモス会、ヘバラギ会、チンダルレ会と世代別のオモニたちの集まりがある。今回の記念行事に向けても、各会ごとにフリーマーケットや積み立て、「1口1万円」寄金運動に奔走。ヘバラギ会のある女性同盟顧問は手作りの記帳台帳を片手に「学校があれば活動家も出るし、信用組合員だって育つ。組織を守り、祖国も守っていかないと。それがなきゃまた国を奪われる」という信念のもと、1世の同胞女性たちを訪ね歩き、寄金を募った。
女性同盟の朱明美委員長は世代ごとの繋がりについて次のように語る。「昔は人も多かったから、子どもが学校を卒業したら終わりという感じだった。上の世代は孫がいないとなかなか学校に足を運ぶこともない。でも今はそれでは成り立たない。世代間の繋がりをオモニ会出身者たちの『サラン会』が模範で示していけたら」。まずはお互いに親しくなって、誰もが気軽に学校を訪ねたくなる雰囲気作りからはじめたいという。
今回アボジ会では学校に遊具を寄付するための寄金「オクトンジャプロジェクト」を立ち上げた。アボジ会会長の朴昇大さん(商工会理事長)は、アボジ会だけでなく、アボジ会OBや青商会OBまで巻き込んで活動していきたいと語る。「学校から足が遠のいた人たちも多い中、学校のための一日労働だったり、ご飯を食べに行ったりと地道な活動を通して層を厚くしていければ。子どもたちのために何かしたいというアボジたちの気持ちを形に表せる機会をたくさん作っていきたい」と抱負を語った。
皆で1歩2歩
50周年に向け同胞社会が一体となる中、学校に緑を増やそうと200株の花を送ったり、コマチュック大会での「クムガン(静岡、長野、北陸合同チーム)」の活躍を耳にし、サッカーボールをプレゼントしたりと、名を明かさずに支援する同胞たちも現れた。
50周年記念事業実行委員会の朴珖秀委員長(静岡県青商会会長)は「静岡同胞社会がもう1歩前に進むためには何人かが100歩200歩努力するのではなく、1世のオルシンから若者まで世代に関係なく、皆で1歩2歩進むことが大切。50周年をきっかけにより多くの層を取り込んで活動したい」と力をこめる。
この期間全校生徒が一丸となって50周年行事、準備にとりくんだと語る中級部3年生の朴垙紀さんは「大雨の中でも多くの人たちが集まった記憶に残る50周年になった。ウリハッキョを守ってきた同胞たちへの感謝の気持ちをこれからも忘れないでいきたい」と笑みを浮かべた。
同胞たちに負けず劣らず、ウリハッキョのために力を注ぐ日本人士たちの姿もあった。2012年に発足した「静岡朝鮮学校友の会」は「朝鮮学校で学ぶ子どもたちの笑顔を絶やさないために」を合言葉に年4回の会報発行や静岡初中の50年の歴史を紐解く聞き取り活動を行っている。授業参観や学校行事への参加、11月には学校支援のためのコンサートも予定。新校舎に設置されている時計と鏡も友の会から贈呈された。鈴木敏和共同代表は「50年もの間、民族教育を守ってきた在日同胞の皆さんに敬意を表すると共に、100年に向けて私たちも一緒に頑張りたい」と語った。
50年の歳月の中、学校の姿、同胞社会の姿は変われど、今も昔も変わらないウリハッキョへの思い。この日同校は、同胞たちと日本の市民たちの温かい支援を得て、子どもたちの未来、静岡同胞社会の未来に向けた力強い一歩を踏み出した。
(文・金宥羅、写真・李哲史)