日朝が連携して学校支援/奈良のキムチ販売
2014年01月28日 16:24 民族教育できること何でも
各地で朝鮮学校を支援する様々な活動が活発に行われている。奈良県の女性同盟本部と日本の市民団体では現在、片道1時間30分以上かけて大阪府内の朝鮮学校に通う児童、生徒たちを支援している。そのひとつがキムチ販売だ。収益金は、通学定期券代の一部として各家庭に配られている。
少しでも負担軽減
女性同盟本部によるキムチ販売は、奈良朝鮮初中級学校が休校(2008年)した2年後の2010年年末から始められた。以来、年に3回欠かさず行われてきた。
販売の手順は、大阪の同胞業者から仕入れた大量のキムチをいっせいに仕分けして、購買対象である同胞や日本の人々に配るというもの。
その中心として活動している梁美恵副委員長(51、非専従)は「子どもたちが民族教育を受けられるように何かサポートができれば」との思いで作業にあたってきた。
かつては奈良初中で教鞭をとっていた梁副委員長。「学校を守り切ることができなかったことが今でも心に引っかかっている」。
休校直後、梁副委員長はほかの関係者と共に毎日交代で東大阪初級学校近くの布施駅まで赴き児童の送り迎えを担った。翌年からはそれが各家庭に委ねられ、保護者自らが送迎に付き添う家庭もあった。そんな姿を見ながら、梁副委員長は「大きな力にはなれないけれど家庭の経済的、精神的負担を軽減できれば」という思いでキムチ販売を始めた。
これまでは奈良初中のオモニ会が学校に通う子どもたちを通して各家庭に供給してきたキムチ販売。しかし学校活動が休止された今、年間を通じた同胞行事に合わせて受注し、その行事の場で分配できるようにと工夫している。
奈良県では、今年4月に奈良初中の幼稚班再開するための準備が進められている。この地域に子どもたちの元気な声が蘇ることは多くの同胞の望みでもある。
梁副委員長は「学校が再開するとなればこんな支援だけではだめだ」と歯をくいしばる。「いま行っているサポートはほんの一部。教育内容などの全ては大阪に委ねているという現状。だからこそ学校が再開するとなればもっともっと出来ることを探して頑張りたい」。
日本の有志たちも立ち上がり
キムチ販売は心ある日本の人々の間でも行われてきた。日朝の友好団体である「ハッキョ支援ネットワーク・なら」のメンバーらだ。
「ネットワーク・なら」の立ち上げは2011年12月。もともと「高校無償化」問題で結束した日本の有志たちが、その活動の過程で朝鮮学校や関係者と繋がりを持つようになり、互いに効率よく連携し合えるようにと発足に踏み出した。
それから約2年間、日本の有志たちは女性同盟のキムチ販売と足並みをそろえて2カ月に1度欠かさず活動を行ってきた。
購買対象は、主に日本の知人、友人、そして高齢者施設や教育機関。どれも朝鮮学校とは、ほぼ関わりのなかった対象ばかりだ。
「ネットワーク・なら」の大平和幸さんは、商品の仕分けに始まり、約半日がかりで「中継所」と呼ばれる施設や個人宅7箇所をひとりで回り、キムチを届けている。商品はそこからさらに個人の元へ配られていくという。
キムチ受注の際には、朝鮮学校の置かれている現状と支援への賛同を欠かさず呼びかけてきた。受注表には毎回、キムチ販売の趣旨が明確に記載されいている。購買元に赴く際には、求められれば朝鮮学校に関する説明も行っている。
そんな地道な活動は同胞たちから感謝されることが多いと言うが、大平さん本人によれば「感謝されるのもなにかおかしい」という。活動の中心にあるのは、「支援というより民族教育を日本社会できっちり保障しなければという、日本人として当然の思い」なのだと話す。
一方、大平さんはキムチ販売を含む各活動の中で、日本社会における朝鮮学校や在日朝鮮人の処遇を改めて考えるきっかけを得たと感じている。この数年の間で、朝鮮学校関係者との関わりは急速に深まった。同胞イベントなどにも、積極的に足を運んでいる。「ネットワーク・奈良」の幹事会では日朝の有志それぞれが朝鮮学校の現状と関連して活発な意見交換も行ってきた。それだけに「運動を通じて出会ったメンバーだけど、理屈ぬきでいまや友だちになっている」と笑う。
大平さんは朝鮮学校の関係者や同胞の姿に率直に「感動した」と話す。「奈良初中は休校したが、(同胞たちの中には)自分たちが作った学校という思いが根強くある。本当に苦労して建てた学校だからこそ、絶対に守りたいという思いが伝わっている」。
自身も地域社会について同じぐらい強い思いを抱いているという大平さん。「日本政府の間違った選択」に共に声を上げ続けたいと静かに話した。
(周未來)