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〈国体・ボクシング〉6冠王者を悩ませた怪我/「一切弱音は吐かなかった」

2013年10月11日 13:37 スポーツ
決勝戦当日、李選手にマッサージを施すオモニの金喜女さんと姉の李聖美さん

決勝戦当日、李選手にマッサージを施すオモニの金喜女さんと姉の李聖美さん

「スポーツ選手に怪我は付き物」とはよく言うが、李健太選手も例に漏れず多くの故障を抱えた。それも、なぜか大舞台の時に。

2012年の新潟インターハイでは、試合中に拳を痛めた。連戦のため炎症は収まらず、はれあがった拳でパンチを繰り出した。また、シューズの底と擦れ合う足裏は、皮がめくれ上がり化膿を起こした。傷口からは菌が入り、決勝前日には39度の熱が出た。ドクターストップがかかったものの、本人は聞き入れず、決勝戦に強行出場し、見事金メダルを手にした。

2013年の山梨での「選抜」では、大会3週間前に、左手親指を負傷。指の腫れが引かないまま試合を迎えた李選手は、痛みに耐えながら戦い抜いた。

また、足首の靭帯にも古傷を抱える。初級部の頃に痛めた箇所は、長時間のロードワークをこなすと今でも悲鳴を上げる。

高1の頃からライト級で試合に挑んできた李選手だが、当時と比べると身長も伸び、筋肉量も増えた。そのため年々減量が難しくなり、食事制限は怪我の治癒を遅らせた。

62戦無敗という戦績を誇るが、「全国」の舞台で決勝まで勝ち進み多くの試合をこなしてきた李選手にとって、故障は避けられないものだった。

今回の東京「国体」(10月4日~8日)でも、拳の腫れと足裏の怪我に悩まされた。ボクサーにとって拳はもちろんのこと、軽やかなステップで相手との距離を保ちながら攻め込む李選手には「痛すぎる」負傷だった。

そんな中、どうにかコンディションを向上させようと、オモニの金喜女さんは全ての大会で、血液循環療法を用いたマッサージを李選手に施してきた。

決勝戦前夜には切れ味鋭いストレートを生む左肩もはれあがり、「痛さのため触れないほどだった」(金さん)。金さんは、2時間近くかけて満身創痍の息子の筋肉をほぐした。試合前には、姉の李聖美さん(21)も一緒にマッサージを行い、家族で談笑しながら「心の緊張」もほぐしていった。

そして迎えた最終決戦。入場から笑みを浮かべ、終始リラックスしていた李選手。判定で自分の名前がコールされると、喜びのあまり、体の痛みもどこかに消えていた。

金さんもアボジの李康正さんも、試合後には息子の怪我を気づかった。息子の痛ましい姿を誰よりも近くで見てきた金さんは、「『全国』の舞台に出場する度に怪我に悩まされ、今大会期間にもアクシデントに見舞われたが、一切弱音は吐かなかった。今までほめたことはないが、よくやったと言ってやりたい」と目頭を押さえた。

(文-李永徳、写真-盧琴順)

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