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〈本の紹介〉「慰安婦」バッシングを越えて/西野瑠美子、金富子、小野沢あかね 責任編集

2013年07月24日 14:49 文化・歴史

偏狭な「愛国」と決別を

本書は、偏狭な「愛国」や安易な「和解」と決別し、植民地主義の克服、正義の実現へ向けて、日本が今なすべきことを述べている。

「慰安婦」問題は、いまだに被害者の納得する解決にはいたっていない。むしろ、混迷の度合いを深めている。また、「慰安婦」の強制をなかったことにしようと旧日本軍の「名誉」を守ろうとする勢力はとどまることを知らないのが現実である。

 大月書店   定価=2200+税。  電話 03-3813-4651

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2012年8月の領土問題を機に橋下徹大阪市長や石原慎太郎元東京知事ら知名度の高い政治家たちが「慰安婦」について「強制連行の事実はなかった」と発言する。また、1993年の「河野談話」で「慰安婦」被害の事実認定を認めたが、2012年末に第二次安倍政権が成立したことにより、「河野談話」否定の危機が高まり、安倍首相は「人さらいのような強制を示す証拠はない」と話した。

今年5月には、橋下市長の「慰安婦は必要だった」などの発言が相次ぎ、「慰安婦」問題の解決を目指す運動は、その開始以来最大の危機に直面した。

本書は、第一部に「慰安婦」問題が軍による強制にほかならなかったことをこの間の研究成果基づいて具体的に示し、「河野談話」の意義について再確認すると同時に、「慰安婦は公娼だった」として「慰安婦」問題と公娼制度の関係についてどう考えるべきかを示し、第二部では、「国民基金」が被害者の求める謝罪・補償からいかに遠いか、さらに被害者の求める謝罪・補償とはどうあるべきかについて考察する。そして、近年広く流布するようになったいわゆる「和解論」が、いかに被害者の尊厳を損なうものなのかを指摘。第三部では、「『慰安婦』問題の解決-今何が必要か」と題して「慰安婦」問題の解決をめざすにあたって、今何をすべきか、何を考えることが重要なのかを若者論、教科書問題、被害者の視点、植民地主義の清算といった観点から示すために、五本の論文と二つのコラムとともに収録した。(秀)

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