〈朝鮮民族の美 51〉鄭●(善に攵)「朴淵瀑」
2013年04月27日 10:39 文化・歴史開城からバスで1時間ほどで行ける「朴淵の滝」は、昔から有名で、多くの文人たちが遊覧して漢詩にもうたわれている。実際そこに行って河原を歩くと李朝白磁の破片があちこちに散らばっていて、酔客たちの夢の跡を見る思いがする。
この絵をよく見ると、彼がこの滝の絵を仕上げるために使った、いくつかの手法が明らかになる。それは、彼の「真景山水画」というものは、西洋のルネッサンス以後に発達した「遠近法」-画家の視点を固定させて、近いものは大きく、遠いものは小さく描く-の画法とは全く異なることである。
それは、まず絵を仕上げるための「多視点」の方法である。滝水の落ちる滝壷は、上からの視点で丸く描かれるが、滝水の当る岩は横からの視点で、黒く大きく描かれる。滝そのものは、下からの視点で上を見上げながら、その長さが誇張されるし、滝口の岩は、下から見えない筈なのに、上からの視点で大きく、しかも滝口にせり出して描かれるし、滝の両側の岩壁は下からの視点で、その高さが誇張され、特に右側の岩壁は滝口より高く描かれ、滝の高さを強調している。まさにピカソの手法を先取りしたような画法の中で、地上の小さな人物と建物は、この絵には何も誇張はないですよと言うように、小じんまりと描かれるのだ。いや、この画家もなかなか人が悪いですね。
(金哲央)