〈ハングルの旅 20〉日本でのハングル普及活動
2013年04月10日 16:04 文化・歴史「ハングル」能力検定試験と学友書房の辞書編さん
今年の6月2日、NPO法人ハングル能力検定協会による第40回「ハングル」能力検定試験が日本各地で実施される。1992年10月9日に創立されたハングル能力検定協会は、世界で最初に韓国・朝鮮語の検定試験を実施した団体である。過去39回実施された検定試験の出願者数は延べ29万人を超え、近年の出願者数は年間3万人近くになっている。
協会の設立理念は、日本で韓国・朝鮮語の普及に尽力し、北南どちらの正書法も認めること、受験者の学習成果に対する公正で正確な評価を与えること、将来北南の正書法統一に貢献できるようにすることだという。
級別出題基準や級別出題語彙、慣用句、慣用表現などをまとめた「도우미(トウミ)」や「더하기(トハギ)」、解説を添えた過去問題集などを発行しており、学習者に便宜を図っている。現在5級の自習を兼ねた講座用のテキストを準備中で、2014年3月に発行する予定である。その後、数年をかけて他の級の発行も予定しているという。今年の3月には、過去問題集の3級~1級から選んだ長文を、音声付の書籍として発売した。これらは日本国内での韓国・朝鮮語の中・上級用学習資料として大いに役立つであろう。過去20年間、「ハングル」能力検定試験が果たしてきた役割と、検定試験としての信用度が認められ、2013年度から国土交通省官公庁が実施している通訳案内士(通訳ガイド)試験の筆記試験の免除対象に「ハングル」能力検定試験の1級合格者が追加されることになった。
現在「ハングル」能力検定試験は、北は北海道から南は沖縄まで日本のほとんどの都道府県で実施されている。ハングル能力検定協会による韓国・朝鮮語の普及活動がたゆまなく活発に展開されている。この状況を見るにつけ協会創立者の故鄭武鎮(チョンムジン)氏が多額の資産を投じ、検定試験を始められた動機について話された次のことばが思い起こされる。
「能力検定の主なる対象は日本人だと思うが、ウリの言葉と文字でウリ民族の知恵と誇り、尊厳を日本人に伝え、両民族の理解と連帯を強めることが主な目的になるだろう。…ウリの言葉と文字を知らない在日の青少年たち、事大主義の虜になり民族的な支柱を持てないでいる一部の人たちに多少なりとも刺激を与えることができればということも(協会創立の)動機の一つと言えよう。
…自画自賛になるかもしれないが民族の魂を守る上である程度貢献していると私自身は自負している」(鄭武鎮著「過ぎし日々を回顧して」から)
学友書房は民族教育と共に日本でのハングルの普及に大きな貢献を果たしてきた在日の出版社である。
現在、学友書房では「朝鮮語学習辞典(仮称)」の編さんが、朝鮮大学校の朝鮮語研究者を中心に10数名で数年前から進められている。
この辞典は、民族教育の場で学んでいる初級部3年生(9歳)から高級部3年生(18歳)を対象に、朝鮮語学習をサポートするための辞典として編さんされるが、大学生や社会人の朝鮮語学習にも役立つ情報豊かな辞典になるという。この辞典の特徴は第1に、理解辞典ではなく「表現辞典」であるということ、第2に、一般的な国語辞典や朝・日辞典ではなく「学習辞典」であるということ、第3に、豊富な「用例辞典」であるという所にあると言えよう。見出し語の単語の意味が平易な朝鮮語で説明されるだけではなく、すべての単語と用例が日本語に訳される。用例も学生たちの日常生活と関わりのある内容にすることで、実際に利用しやすい例文になるという。
見出し語は3万5千個から4万個を予定しているが、一般の辞典として換算すれば、9万5千個から10万個の語彙が収録される。学友書房で1986年に中等教育実施40周年を記念して出版された「朝鮮語小辞典」の見出し語が1万8千個なのに比べればはるかに多い数である。2016年10月、中等教育実施70周年を記念して出版される予定だ。
この間、編さん委員会の総責任者と実務担当責任者が大病に見舞われ、出版時期に支障をきたすというアクシデントもあったが、今は順調に作業が進んでいる。
南北朝鮮はもちろんのこと、日本にもない特徴のある朝鮮語辞典である「朝鮮語学習辞典(仮称)」が今まさに編さんされつつある。統一朝鮮の将来を担う民族教育の場で育っている学生たちのためにも、一日も早い発行が待ち望まれる。
(朴宰秀、朝鮮大学校朝鮮語研究所所長 =おわり)