公式アカウント

〈朝鮮民族の美 48〉申潤福「二人の女人」

2013年04月05日 16:08 文化・歴史

妓生の生態とか、両班と妓生の遊楽図などを得意とした申潤福にも、このような働く庶民の女性を描いた珍しい作品がある。

絹本に淡彩 28.3×19.1cm ソウル中央博物館

家庭の若い主婦が市場に買出しに行き、帰りながら知り合いの老女に出会ったところ。若い主婦は、頭には籠一杯の魚や生物(なまもの)、脇には網袋に一杯の野菜を肩にかけている。老女にちょっとあいさつして、家族の待つ家に帰りたいのだが、老女の話は長くなりがちである。若い主婦の心急ぐ様子が、その足に現されている。

老女は皺の多い顔をさけ、後姿であるが、背はピンとしている。若い主婦は正面像に近く、道を急ぐためチマの裾をたくし上げて腰のところで止めてあり、しかも良く見ると、短いチョゴリの下から豊かな乳房がはみだしている。つまり家には乳飲み子がいますよと若い母親であることを誇っているのだ。髪はふさふさと豊かであるし、庶民の仂く女性像でありながら、何となく乳の匂いがただようような優しい女性像が描き出されており、さすが女性の特性をよくつかみ取る申潤福ならではの作品となっている。チョゴリの襟と止紐の紫色、老女の白と向き合うチマの緑色、頭上の籠の赤。その中の若い主婦の心意気を示すようなピンと立つ魚の尾など、画家の手になる配色と構図によって、平凡な女性像を描きながら、それは一つの典型的な朝鮮時代の主婦像となっている。

(金哲央)

Facebook にシェア
LINEで送る